家庭教師ファースト教育コラム発達障がいについて

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【発達障がい】どんな教材を使う?タイプ別教材の選び方

  • 発達障がいについて
  • 2023.11.28
  • 家庭教師ライターH.K

「発達障がい」や「発達障がいのグレーゾーン」という言葉を耳にする機会が増えてきているように、発達障がいの存在が社会に広く認知されるようになってきています。支援についてもフォーカスされており、学校とは別に発達支援センターや、放課後等デイサービスにおいて様々な取り組みがそれぞれの工夫において成されています。

しかし、そのような機関に行くことに対してハードルを感じている方がゼロではないことも確かであり、サービスを受ける必要性までは感じていない場合や、就労、家庭の都合によってサービスを受けることが難しい場合もあります。

そこで、今回は専門機関ではなくても取り組むことが出来る工夫として、勉強時の「教材の選び方」に着目し、教材選びのポイントや、家庭、学校で実践出来る工夫についてご紹介していきます。

冒頭で述べたように、発達障がいに関する研究が進むことでメディアを通して社会に情報が広まっていますが、情報が溢れているからこそ、全ての情報を鵜呑みにして良いとは限りません。情報を取捨選択しながら、本記事の内容とも照らし合わせてベストな支援を行って頂けたらと思います。

なお、教材の選び方にお悩みの際は是非私たち家庭教師にもご相談ください!

発達障がいの概要とそれぞれの特性

発達障がいの概要とそれぞれの特性

本章では、本記事で取り上げる発達障がいのそれぞれの特性について簡単に解説していきます。発達障がいの種類に応じたベストな教材を選ぶためには、それぞれの障がいの特性を理解していないと選ぶ基準や根拠が曖昧になってしまいます。

そのため、「なぜこの教材が良いのか」、「どのような基準で選んでいったらよいのか」等、実際に選ぶ場面や教材の内容を想像しながら概要の理解に努めて頂けますと幸いです。ただし、性格や器質の違いがあるように、発達障がいも障がいの特性には個人差があるため、そちらは十分考慮した上で目を通して頂けたらと思います。

発達障がいの概要

「発達障がい」というのは、その名の通り発達に関する様々な障がいの総称であり、代表的なものは「自閉スペクトラム症(ASD)」、「注意欠如/多動性障がい(ADHD)」、「学習障がい(LD)」です。この他、吃音症、チック、発達性協調運動障がい等が発達障がいに分類されます。

この中でも、勉強場面において主に影響があるのは、「自閉スペクトラム症」、「注意欠如/多動性障がい」、「学習障がい」であるため、本記事ではこの3種類の発達障がいについて取り上げ、概要と教材の選び方について見ていきます。

概要として、発達障がいの診断についてですが、世界的にはWHO(世界保健機関)が作成している「ICD10」(国際疾病分類、近々「11」が最新となる)というものと、APA(アメリカ精神医学会)が作成している「DSM-5」というものが用いられています。

どちらも頻繁に活用されていますが、「ICD」は発達障がいに限らず身体的な疾病も含んでいることに対して、「DSM」は作成元が精神医学会であるように精神疾患系の内容に特化しており、発達障がいについてよりフォーカスされているのは「DSM-5」ということになります。それぞれに細かな診断基準が設定されており、症状の種類や発現した年齢、継続している期間等から診断される形です。

今回は、教材選びのポイントがメインのテーマであるため、診断に関する詳細は割愛しますが、診断が付いてそれで終わりではないため、あくまでもひとつの通過点であり、「知るために診断を受ける」ことも重要ではありますが、「適切な支援をする(受けることが出来る)ために診断を受ける」という考えが大切になります。

発達障がいの中でも、いわゆる「グレーゾーン」と呼ばれる場合は明確な診断がついていないことが多いですが、診断を付けることが絶対に必要かと言うとケースバイケースで、診断を受けた後に支援に繋げることが最も重要です。

これらのことから、診断を受ける際にも、適切な支援を考える際にも、「子どものことをよく理解している」、「特性を把握している」ことが鍵を握っていることが分かります。この後教材のポイントを考える際にも、一般的な発達障がいの傾向とは異なる特性が表れている可能性があることを日常生活の中から発見して頂き、より有効性の高い教材を選び、活用して頂けたらと思います。

自閉スペクトラム症(ASD)

自閉スペクトラム症

本項からは、発達障がいの具体的な概要について見ていきます。はじめにご紹介する発達障がいは、「自閉スペクトラム症」と呼ばれているものです。DSM-5の1つ前の基準となっていたDSM-Ⅳでは、「広汎性発達障がい」というカテゴリーの中で「自閉性障害自閉症スペクトラム」という位置づけが成されていました。

そこから、DSM-5に改訂されたことで、名称は「自閉スペクトラム症」に変わり、同カテゴリーの中に位置づけられていたアスペルガー障がいは自閉スペクトラム症に含まれる形となりました。

したがって、従来の考え方ではアスペルガー障がいの診断基準に該当していたとされる場合であっても、今後新規にアスペルガー障がいやアスペルガー症候群と診断される可能性はほとんどなく、グレーゾーンとして診断されるか、自閉スペクトラム症として扱われることとなります。

自閉スペクトラム症の特性としては、他者とのコミュニケーションを構築することへの困難さが挙げられます。自閉スペクトラム症である全ての人にコミュニケーション構築の難しさがあるわけではありませんが、この特性は、自閉スペクトラム症の特性の中でも比較的多くの人に見られるものです。

このような特性が表れる理由としては、自閉スペクトラム症の場合、他者の気持ちを理解することが難しいため、他者に関心を持ちにくいためという2つが挙げられます。コミュニケーションを取るということは、他者と関わっていたいという意欲があったり、コミュニケーションを図ろうとする気持ちがあったりすることで成立するものであるため、他者に何らかの関心や興味が向いていることが大前提になります。

人間の発達として、乳幼児期には興味があるものを目で追う、指を指して示すことで他者と共有する過程がありますが、自閉症スペクトラムの場合、他者への関心が向きにくいことから、他者と何かを共有したり、コミュニケーションを円滑に構築したりする上で難しさが生じるということです。

しかし、当事者としては、故意にコミュニケーションを避けているのではなく、「他者に関心を示す」ということそのものが理解出来ない部分があります。そのため、コミュニケーションを上手く取ることが出来ない場面で叱ったり、頭ごなしに理屈を説明したりすることは逆効果になります。

これは、学習を行う場合でも同様で、特に物語文の文章読解問題の際に、状況から読み取る、想像して解答するということに難しさが生じるため、その点につまずきが感じられる場合は、出来ないことを責めるのではなく考えやすい方法で理解を促すことが大切です。

方法のひとつとしては、視覚的な情報にすると理解が高まる場合があるため、文章の流れをイラストや簡単な絵にして、「相手の子はこういう気持ちだよ」ということや、「これは○○が起きている場面だよ」と声掛けを行い、分かりやすく理解が出来るように働き掛けてみてください。日常生活、学習共に、情報を視覚的に提示することが有効です。

そして、自閉スペクトラム症の場合、ある特定のことに強い興味や関心を示すことがあります。この特性は、学習を進めていく上で集中して取り組むことに活かすことが出来るため、どのようなことに興味や関心を持っているのか理解しておき、1人ひとりに合った学習方法を展開出来るようにしていくと良いです。

好きなキャラクターや動物、この分野に関しては暗記力がずば抜けている等、遊びに関連していることでも効果があります。勉強は、子どもが出来る限り苦痛と感じずに進めていくことが大切であるため、遊びに近いものほど興味や関心をリサーチして教材選びに活かすようにしましょう。

注意欠如/多動性障がい(ADHD)

注意欠如/多動性障がい

注意欠如/多動性障がいは、先に述べたDSM-5からこの名称へと変更になった障がいです。DSM-Ⅳでは、注意欠陥および破壊的行動障がいというカテゴリーの中に位置づけられており、注意欠如多動障がい(混合型、不注意優勢型、多動性・衝動性優勢型)と特定不能の注意欠如多動障がいから構成されていました。

これがDSM-5では、「注意欠如/多動性障がい」となり、注意欠如/多動障がい(混合発現型、不注意優勢型、多動性・衝動性優勢型)と他で特定される注意欠如/多動性障がい、及び特定出来ない注意欠如/多動性障がいの構成となりました。

注意欠如/多動障がいは、名称から分かるように注意力に欠ける部分が特性として挙げられます。この障がいの中でも、どの型に当てはまるかによって出現する特性の強さが異なりますが、注意力の欠如は比較的多くのケースに当てはまる特性と言われます。

そして、注意力の欠如に付随して出現する特性として、情報を取り込む力の弱さも特性として挙げられます。情報自体を取り込むことは出来ますが、一度に多くの情報を取り込んだり、聞いたものを記憶したりすることが難しい部分です。

発達障がいの場合、情報を視覚的に提示して伝えることが基本的事項ですが、注意欠如/多動障がいの場合は特に、「情報を視覚的に表す」ことが重要になります。情報を提示する時は、目で見て分かりやすい方法で表したり、一度に提示する情報量を抑えたりすることが基本です。

注意の持続時間が短いこともあるため、情報を提示する際に視覚的な方法を用いることに加え、一度に多くの情報を伝えようとせず、その都度こまめに情報を伝えることも押さえておくべきポイントとなります。

また、苦手なことや不安なことに直面した場合、物事を思うように進めることが出来ない場合には、衝動的になる傾向が強いことも特性として挙げられます。学習場面において難しい問題や苦手な問題に直面することは頻繁に起こり得ることであるため、このような状態になった場合に取るべき対応方法を知っておくことも大切です。

一般的に、衝動性が高まる傾向がある場合には、クールダウン出来るスペースを学習空間の中に設けておくことが有効であるとされています。簡易的なものでも、落ち着くことが出来るスペースが身近にあるということに意味があるため、パーテンションやカーテン、段ボール等で部屋の隅に一画の空間を設置してみてください。

学習障がい(限局性学習症)

学習障がい(限局性学習症)

続いては学習障がいですが、一般的に「学習障がい」と呼ばれているものは、正式にはDSM-5の中で「特異的学習障がい」というカテゴリーに属するものになります。特異的学習障がいは、「読みの障がい」、「書き表現の障がい」、「算数の障がい」に分類されており、DSM-Ⅳからの改訂では「特定不能の学習障がい」という分類が無くなりました。

改訂による大きな変化はありませんが、元々はそれぞれ「読字障がい」、「書字表出障がい」、「算数障がい」という表現が成されていたため、より分かりやすい名称へと変更された形になります。

学習障がいの主な特性は、勉強に関する全ての領域・分野に障がいが生じるわけではないということです。「読字」のみ、「算数」のみというように、基本的には苦手のメインとなる部分はある特定の領域に限定される場合が多くなります。この点が、知的障がいと異なる部分と考えて頂くと分かりやすいかもしれません。

このようなことから、全般的な知的の発達に遅れが生じている場合には、学習障がいではなく知的障がいということになります。学習障がいと知的障がいとの区別は難しい部分ではありますが、基準としては年齢が大きく関係しています。気になると感じている特性が学齢期以降に目立つようになったのか、あるいは学齢期以前から目立っていたのか、苦手ということが目立つようになり始めた時期を考えて頂くと良いです。

学習障がいは、苦手とする領域が限定されることもあり、学齢期以降に目立つようになります。これは、他の発達障がいと比較すると、発見の時期が遅くなる傾向にあるため、より一層早い段階に対応することが大切です。

また、障がいが生じる領域が限定的であるがゆえに、違和感とし周囲から気付かれるケースが少なく、発見が遅くなることも特徴のひとつです。読みの障がいの場合には、文字を読むことに困難さが生じ、書字には特に大きな困難が見られないため、音読練習が不足しているのではないか、読書を多くさせるべきなのではないかという考えに至ることがあります。

算数の障がいに至っては、算数を苦手とする子どもが多いこともあり、算数だけ苦手で勉強を怠っているのではないかと捉えられてしまう場合もあります。ここで重要なのは、障がいであることから日頃の勉強に対する努力だけでは改善が難しいと理解することです。

ある特定の領域に困難を抱えているため、「勉強が出来るか否か」、「日頃勉強しているか否か」ということは関係ありません。勉強全般というよりも、困難さが生じている領域にフォーカスし、それぞれが感じている困難さに合わせた支援を行うことがポイントとなります。「どの領域に困難を抱えているのか」ということをしっかりと受け止め、楽しんで学習出来る環境を整えたり、教材を用意したりすることが大切です。

ここまで、発達障がいの中で特に勉強と関係が深い3つの障がいについて概要と特性を見てきました。教材を選ぶ上では、これらの特性の理解が重要になるため、次章では本章での内容を振り返りながら読み進めて頂けたらと思います。

発達障がいのタイプに応じた教材の選び方

発達障がいのタイプに応じた教材の選び方

勉強を楽しく行うためには、難しい内容であっても子どもが楽しいと感じる工夫が必要であり、工夫が出来るひとつとして教材が挙げられます。発達障がいの場合は、一般向けに販売されている教材をそのまま用いるよりも、かみ砕いて分かりやすくしたり、適当なものが無い場合はその部分だけ簡単に作成したりすることも効果的です。本章では、前章で述べた3つのタイプ別にオススメの教材についてご紹介していきます。

自閉スペクトラム症(ASD)のお子さん向け教材

はじめに、自閉スペクトラム症の場合ですが、周囲の大人が教材を決めるよりも、子どもと共に決めていくスタンスでいること、子どもが興味や関心を示す教材を選ぶことがポイントです。

基本的に、興味や関心があることには周囲も驚くほどの熱量を示しますが、そうではない場合は「少しやってみよう」と思うことも難しいほどであるため、内容よりも興味や関心を示している度合いを見極めながら選ぶことを心掛けると良いと思います。

しかし、内容を全く考慮しなくて良いかというとそれでは勉強にならなかったり、力を身に付けていくことが出来なかったりと教材としての意味を成さなくなってしまうため、ある程度の目安で先に大人が選び、その中から特に子どもが興味や関心を示しているものに絞っていく流れがベストです。

また、自閉スペクトラム症の場合は、こだわりの強さが顕著に見られることが多いため、教材らしい教材を必ず使うことはありません。例えば、カードゲームが好き、カードゲームに対して興味や関心が高い場合には、そのカードを用いて算数の学習を行います。

もっとも活用しやすい方法は、計算練習を行うことです。カードゲームの種類によって活用方法は異なりますが、カードに書かれている数字を用いて攻防を行うタイプである場合、その数字で簡単な計算練習を行うことが出来ます。

遊びの延長に感じてしまう部分があるかもしれませんが、ただプリントに計算式が羅列されているドリルやワークを解くよりも、子どもがやる気を持って取り組んでいる様子が想像出来るかと思います。

カードに限らず、計算おはじき(計算ブロック)に子どもが好きなシールを貼ったり、ごっこ遊びに関心が高い場合はお買い物ごっことして計算練習を含めたりすることも効果的です。

このように考えると、「教材自体が勉強に向いているものか」ということはそれほど重要な観点ではないことが分かります。「教材」と聞くと、教科書やドリルを思い浮かべる方が多いと推測しますが、学びたいと思うことが出来る素材や道具が子どもにとって、特に発達障がいの子どもにとっては重要であるため、子どもの目線に立って選んでいくことを心掛けて頂けたらと思います。

そして、概要の部分でも触れましたが、自閉スペクトラム症の場合は他者の気持ちを理解することに難しさがあります。この特性が与える影響としては、物語文の読解が挙げられますが、文章から読み取ったり考えたりすることが難しい場合は、イラストにして人物の言葉や気持ちを吹き出しで表すような工夫が出来ます。

文章とそれに対応する問題だけが記述された教材では、ただ文字の羅列を読んで終わりになってしまいます。内容に対してより深い理解を促すためには、内容が理解しやすくなるようなひと手間を既存の教材に加えると良いです。

教材を選ぶ基準やポイントは教育者によって様々ですが、自閉スペクトラム症の場合は、教育者が率先して選ぶというよりも、子どもの意見を尊重し、より熱中しやすい内容のものを教材へと変化させて活用することがポイントとなります。

注意欠如/多動性障がい(ADHD)向け教材

注意欠如/多動性障がい

続いて、注意欠如/多動性障がいにおける教材選びのポイントですが、刺激が少ないか否かという観点と情報が視覚化されているかという観点が重要です。刺激の量についてですが、特に注意欠如が主な特性として見られている場合、刺激の量が多い教材では勉強に集中出来ない恐れがあります。

例えば、興味や関心が高いイラストやキャラクターが描かれている教材を選んだ場合、勉強の内容はそっちのけでイラストやキャラクターにばかり目が向いてしまい、肝心な内容は頭に入っていきません。

自閉スペクトラム症の場合は、興味や関心の高さが良い方向に働くことを活かし、あえてお気に入りのイラストやキャラクターを活用する方法をご紹介しましたが、注意欠如/多動性障がいの場合は、関心が向きすぎることによって本来するべきことが疎かになってしまう可能性があります。そのため、自閉スペクトラム症とは反対に、関心の材料を除いた刺激が少ない教材を選ぶことがポイントです。

また、教材という観点とは少し異なりますが、勉強に取り組む環境においても、刺激を最小限に抑えることが効果的とされています。勉強は、机と椅子と勉強道具のみの環境で行い、玩具を置いたり、教室の場合は壁面にポスターや掲示物等を貼り過ぎたりしないようにすることで、目の前のことに注意が集まるように工夫することが出来ます。

そして、情報が視覚化されているかという観点ですが、注意欠如/多動性障がいに限らず、発達障がいの場合は目で見て情報をキャッチする傾向が高いとされており、頭の中で何かを行うということが注意欠如/多動性障がいの場合は特に難しいとされています。

つまり、計算問題、特に計算手順が複数回に渡る算数や数学の文章問題を解く場合、全ての段階で途中計算を記録しておいたり、必要な手順のどこまで進んでいるのかが理解出来たりする方が取り組みやすいということです。

一般的な教材は、「式」、「答え」という欄があり、複雑な計算が必要な場合は「途中計算」として筆算を記入する欄がある形ですが、①「買ったもの全ての値段を求める式」、②「①の式を使ってお釣りを求める式」といったように手順を細かく分け、頭の中で何かを行うということが無いように、その都度情報が視覚化されている教材をオススメします。

その上で、慣れてきたら①、②といった流れのみを示し、そこで行う工程の説明は省いた教材へと変化させ、子どもの能力や単元ごとの得意・不得意を見極めながら、その時のレベルに応じた教材を選んでいくことが大切です。

学習障がい(限局性学習症/LD)向け教材

学習障がい(限局性学習症)

最後に学習障がい(限局性学習症)ですが、最も効果的なのは、症状が現れている学習内容に特化した教材を選ぶことがポイントです。概要でも述べたように、ある特定の勉強に困難さがある状態が学習障がいであるため、特に他の障がいを併発していない場合は困難さが生じている単元に力を入れている教材を選びます。

読字障がいの場合は、文章の行間が広く取られているもの、区切りが分からない場合は単語や文節で区切られている教材を用います。その他、音読の練習をする場合は、周囲の大人が先にお手本として読んでその後に続いて読むようにしたり、あらかじめ録音したものを子どもが自分のペースに合わせて再生したり繰り返し聞いたり出来るようにする方法が効果的です。

読みの障がいの場合は、「は」を「わ」の音と読んだり、「へ」を「え」の音と読んだりする、その区別が苦手ということもあります。このような場合は、どのような状況で読み方の音が変わるのか学ぶと共に、お手本があることでさらに状況を掴みやすくなるため、聞き取りやすいはっきりした声や音声を教材として用いることが有効な方法になります。

書字障がいの場合は、空間認知の力が弱いことによって、文字の形やバランスを整えて書くことが難しい場合が多いです。そのため、文字の構造を理解しながら学んでいくことが出来る教材を選ぶことがポイントです。

例えば、漢字の練習を行う場合、ただドリルやノートにお手本を見ながら練習するのではなく、ひとつの漢字を部首と旁に分けたパズルで組み合わせや位置関係を学んだり、さらに細かくパーツごとで分けられたものを見て何の漢字であるかを考えたりするといったような、一歩踏み込んだ内容であると理解が深まります。

細かな形から全体を把握した上で書字練習を行うことにより、左右を反転させて書いたり、形が崩れた文字を書いたりすることを防ぐことが出来るため、いきなり書字の練習から始めるのではなく、その前の段階で活用出来る教材を選ぶようにしましょう。

算数障害については、特に計算が困難とする場合が多いですが、注意欠如/多動性障がいと同様に、目で見て理解出来る方法で学び始めることが効果的です。教材としては、絵カードや計算ブロック(おはじき)を活用します。

計算式を書いて筆算の練習をするというのは、計算の方法を学ぶためには良い練習になりますが、あくまでも方法を学んでいるだけで、なぜその答えになるのかということは理解出来ずにやり過ごしていることが多いです。

絵カードや計算ブロック(おはじき)を用いることにより、式や計算として行われる過程を目で見て理解することが出来、考え方を理解することで他の問題や計算方法にも活かすことが出来ます。

実際に絵カードや計算ブロック(おはじき)等を物として用意することが難しい場合は、イラストで計算の過程を表したり、取り組みながら子どもに書いてみるように指示したりすることも効果的です。

本章で取り上げた3つのタイプは、どれも「発達障がい」という大枠は同じものですが、自閉症スペクトラムでは効果があっても注意欠如/多動性障がいでは反対に影響を及ぼし過ぎてしまうこと、注意欠如/多動性障がいでも学習障がいでも効果が高いこと等様々であるため、障がいの特性を理解しながら、その時々で必要、適切な教材を選んで頂けたらと思います。

おわりに

本記事では、「どんな教材を使うべき?タイプ別教材の選び方」というテーマで、自閉スペクトラム症、注意欠如/多動性障がい、学習障がい(限局性学習症)の3つの発達障がいについて、勉強の際に用いる教材の選び方についてご紹介してきました。

教材を選ぶポイントは様々ですが、3つのタイプに共通して重要なのは、それぞれの子どもの特性や興味、関心が高いことを理解、把握しておくことです。専門的な視点で教材の選定に取り組むことも必要ではありますが、それで子どもが楽しく、必要な勉強が出来るのかというと必ずしもそうではないと考えられます。

まずは、本記事の前半部分で述べているように障がいの概要を理解し、その上でコミュニケーションが持続しない、情報の理解に時間を要する、注意の持続が困難といったような特性を把握して、その特性にアプローチしたり、反対に特性を活かしたり出来るような教材を選ぶ、しっくりこない場合は作成することが大切です。

専門家が作成したり、販売されたりしているものだけが教材ではありません。既存の教材という枠に捉われず、子ども一人ひとりに合った教材で楽しく、継続して学ぶことが出来るようにすることを心掛けて頂けたらと思います。本記事がその一助になりますと幸いです。

教材選びにお悩みの際は是非私たち家庭教師にもご相談ください!

この記事を書いたのは

家庭教師ライターH.K

家庭教師ファーストの現役家庭教師。大学及び大学院では児童心理学を専攻。

著作・制作

家庭教師ファースト/株式会社エムズグラント

『質の高いサービスを、良心的な価格で』をモットーに、全国で20年以上家庭教師を紹介しています。実際に担当する教師による体験指導受付中。教育に関する相談もお気軽に。

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