家庭教師ファースト教育コラムその他の雑学

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日本最古のSF!?竹取物語の不思議~知れば授業が楽しくなる~

  • その他の雑学
  • 2024.03.01
  • 家庭教師ライター S.F

「今は昔、竹取の翁といふもの有りけり。」こんな書き出しに覚えはありませんか?そう、これは現存する日本最古の物語と言われる『竹取物語』の冒頭の一文です。暗記している、なんて方ももしかしたらいるかもしれませんね。

小学校や中学校の国語、そして高校の古典と、さまざまな学年の教科書に掲載されている『竹取物語』。童話の『かぐや姫』として読んだ方も多いはずです。そんな私たちに馴染み深い『竹取物語』ですが、日本最古のSFと言われていたり、実は様々な謎が隠されています。今回は、そんな『竹取物語』を解説しながら、秘められた不思議についてみていこうと思います。

なお、お勉強の事で困ったことがありましたら、私たち家庭教師にもご相談ください。

竹取物語の基本情報

 基本情報

それではまず『竹取物語』について、いつ誰が書いたものなのかという基本情報をみていきましょう。

竹取物語の成立時期

竹取物語の成立時期は平安時代前期。はっきりとした成立年は分かっていないので、研究者たちの間でも意見が分かれているようですが、800〜900年代ではないかと言われています。そんな『竹取物語』は、現存する限りでは日本で最も古い物語であるとされています。同じ平安時代、1000年頃に成立した『源氏物語』の中でも、「物語の出で来はじめの祖」と記されており、当時から日本最古の物語だと認識されていたようです。1000年前の人たちも、今の私たちと同じように『竹取物語』のお話に親しんでいたと思うと、なんだか面白いですね。

作者の謎

『竹取物語』は成立年だけではなく、作者も未詳。おそらく男性で、博識な人であったということしか分かっていません。実はこの時代の物語文学においては、作者が作品に名前を記すことはありませんでした。『源氏物語』は、たまたま紫式部の日記が残されていたことから、作者が判明しただけなのです。作者候補としては様々な人物が挙げられていますが、今なお決定的な証拠は見つかっていません。手がかりにできるのは、文字の読み書きができたこと、歌の知識や才能があったこと、貴族の実情を知っていたこと…。それと、当時の権力者である藤原氏に反発的であったことが挙げられます。後のあらすじでまた紹介しますが、かぐや姫に結婚を申し込む5人の貴族は、恥をかいたり、大怪我をおったり、果ては命を失ったりと全員散々な目にあっています。当時の貴族社会では、大っぴらに権力者を批判することはできませんでした。そこで『竹取物語』の作者は、物語の中で密かに不満の意を述べたのです。

竹取物語の内容解説

内容解説

『竹取物語』は、4部構成の物語として捉えると、分かりやすく読み取ることができます。ここからは物語を「かぐや姫の誕生」「5人の貴公子」「帝とかぐや姫」「月への帰還」の4つのパートに分けて、それぞれについてあらすじと簡単な解説を行っていきます。

かぐや姫の誕生

むかしむかし、竹を取って生活する竹取の翁という者がいました。ある日、いつものように竹林へ向かった翁は、光り輝く不思議な竹を見つけました。不思議に思ってその竹を切ってみると、中にはとても小さくて愛らしい女の子がいました。翁は女の子を自分の家に連れ帰り、妻の媼と共に育てることを決めます。女の子を引き取ってからというもの、中に黄金が入った竹を見つける日が続き、夫婦は次第に豊かになっていきました。

女の子はどんどん成長し、3ヶ月ほどで年頃の少女になりました。黄金の竹によって大金持ちになった翁は、この世のものとは思えないほど美しく成長した女の子のために、御室戸斎部(みむろどいんべ)の秋田を家に招いて名前を付けさせます。秋田によって女の子は「なよ竹のかぐや姫」と名付けられ、翁はお祝いに多くの男を呼んで、3日間の盛大な祝宴を開きました。かぐや姫の美しさは瞬く間に噂になり、多くの男がかぐや姫と結婚したいと考えるようになります。

これが第一部「かぐや姫の誕生」のあらすじです。とても有名で特に解説するところもありませんが、冒頭部分の原文は教科書などにも頻出なので、見ておくことにしましょう。

冒頭部分の原文

今は昔、竹取の翁といふものありけり。野山にまじりて竹を取りつつ、よろづのことに使ひけり。名をば、さぬきの造となむいひける。その竹の中に、もと光る竹なむ一筋ありける。あやしがりて、寄りて見るに、筒の中光りたり。それを見れば、三寸ばかりなる人、いとうつくしうてゐたり。

現代語訳:今となっては昔のことですが、竹取の翁という者がいました。野や山に分け入って竹を取っては、いろいろなことに用立てていたのでした。彼の名をさぬきの造と言いました。その竹の中に、根元が光る竹がひとつありました。不思議に思って、近寄ってみると、竹筒の中が光っています。その中を見ると、三寸(約9cm)ぐらいの人が、とてもかわいらしい様子で座っていたのです。

この部分は学校で暗記するテスト等もあったりしますね。

5人の貴公子

5人の貴公子

かぐや姫に夢中になる男たちが続出しますが、そのほとんどは次第に諦めて去っていき、最終的に残った貴公子は5人だけでした。かぐや姫に会いたいと来る貴公子たちを、翁は何度も断りますが、諦めようとしない彼らの態度についに折れます。翁は自分がいなくなった後のことを考え、かぐや姫に5人の中の1人を選んではどうかと勧めます。翁から結婚を勧められたかぐや姫は、相手の心も知らないままに結婚するのは嫌だと言い、5人の貴公子に「自分が見たいと望むものを持ってきてくれた人と結婚する」と伝えます。どれも大変珍しい宝物ばかりでしたが、5人はかぐや姫の無理難題に臨んでいくことになるのです。

5人の貴公子と5つの難題は『竹取物語』の中でも特に印象的な部分です。それぞれの難題について1人ずつ見ていってみましょう。

その1. 石作の皇子と仏の御石の鉢

石作の皇子に課された難題は、「仏の御石の鉢」という天竺(今のインド)に1つしかないといわれる品物です。最初はやる気があった石作の皇子ですが、結局わざわざ遠くまで行っても見つかるはずがないと思ってしまいます。そこで、かぐや姫に今から天竺に行くと告げ、3年後に大和の国の山寺で、すすけた普通の鉢を手に入れました。そしてかぐや姫に「これが本物だ」と偽って見せますが、本物にあるはずの光がないことから、すぐに偽物と見破られてつき返されてしまいます。それでも石作の皇子は諦めずにかぐや姫に歌を送り続けたとのことですから、おかしな話ですね。

その2. 車持の皇子と蓬莱の玉の枝

車持の皇子には、根が銀、茎が金、実が真珠でできている「蓬莱の玉の枝」という品が課されました。策略家の車持の皇子は、かぐや姫に探しにいくことを告げると、都を離れて腕の立つ鍛治職人を集めます。そして精巧な偽物を作らせると、わざと疲れたようなふりをして、かぐや姫の元にやってきます。車持の皇子の語る冒険譚に翁は感心し、かぐや姫に結婚するように勧めます。しかしその時、なんと枝を作った職人たちが代金が支払われていないことを訴えにやってくるのです。結局偽物であったことがバレてしまい、車持の皇子もかぐや姫と結婚することはできませんでした。

その3. 阿倍御主人と火鼠の皮衣

右大臣阿倍御主人に課された品物は、「火鼠の皮衣」という火に燃えない布です。阿倍御主人は大金を支払って唐の商人から皮衣を取り寄せ、かぐや姫に贈りました。しかし、かぐや姫が火をつけてみると、瞬く間に火はまわり、皮衣は燃え尽きてしまいました。偽物に大金を投じたことを知った阿倍御主人は、顔を青ざめさせて帰って行きました。

その4. 大納言大伴御幸と龍の頸の玉

大納言大伴御幸に課された難題は、「龍の頸の玉」という龍の首元で光る5色の宝物です。大納言は初め家来に命じて取りに行かせますが、待てど暮らせど帰ってこない家来にしびれを切らし、自ら船に乗って探しにいくことにしました。しかし探索中に海が荒れて船が難破し、大納言は命からがら逃げ出してきました。嵐の後、大納言は重病にかかって目も腫れてしまい、かぐや姫と結婚することを諦めました。

その5. 石上麻呂足と燕の子安貝

中納言石上麻呂足には、燕が卵を産むときに一緒に出てくると言われる「燕の子安貝」が課されました。石上麻呂足は色々な人のアドバイスを受けながら、自分で燕の巣に取りに行きますが、巣の中で何かを掴んだ後に転落して腰の骨を折る大怪我を負ってしまいます。子安貝と確信して掴んだのは、よりにもよって燕のフンでした。さすがに気の毒に思ったかぐや姫は見舞いに歌を贈りますが、石上麻呂足は返歌を詠み終えた後、死んでしまいました。

いかがでしたか?貴公子たちを滑稽だと思うか、かぐや姫の性格が悪いと思うか、人によって受け取り方は様々かもしれません。実は、この貴公子たちにはモデルがいたと言われています。石作の皇子は多治比真人嶋(たじひのまひとしま)、車持の皇子は藤原不比等がモデルであり、阿倍御主人、大伴御幸、石上麻呂足についてはなんと実在の人物なのです。また、この5人、紹介した順にどんどん身分が低くなっているのですが、身分が低い人ほど誠実な対応をしているように見えるのも面白さの一つです。最初から偽物を用意した皇子たちよりも、ちゃんと自分で行動した大納言や中納言の方が、好感度が高く写りませんか?かぐや姫に翻弄された挙句命まで落とした中納言なんて、とてもかわいそうに思えてくるほどです。

かぐや姫と帝

かぐや姫の噂は帝の元にも届きます。帝は使いを遣わし、かぐや姫を宮中に使えさせようとしますが、かぐや姫はあいも変わらず拒絶します。そこで、帝は不意をついてかぐや姫の家に入りました。かぐや姫を見た帝は、美しい彼女を宮中に連れて行こうとしますが、かぐや姫の姿は一瞬で影となって消えてしまいます。帝は連れて帰ることは諦めますが、かぐや姫と歌のやり取りを始めました。かぐや姫も徐々に心を開いていき、2人の関係は少しずつ発展していきます。

前段で5人の貴公子を翻弄したかぐや姫ですが、帝と出会って少しずつ異性に興味を持ち始めたようです。しかしみなさんもご存知の通り、かぐや姫は月の住人。いずれ月に帰らなくてはならず、結ばれることはかないません。関係を深めては悲しみが増すだけであると理解しつつも、和歌のやりとりをやめられないかぐや姫。帝との交流からは、彼女の成長が読み取れます。

月への帰還

月への帰還

かぐや姫が帝と出会って3年の月日が経った頃、かぐや姫は月を見ては嘆き悲しむ表情を見せるようになりました。心配した老夫婦が訳を尋ねると、かぐや姫は自分が本当は月の都の住人で、8月15日に月から迎えが来ると話します。かぐや姫は、翁たちと過ごした地上を去るのが辛くて悲しんでいました。そのことを知った帝は、翁の家に兵士たちを派遣します。そして8月15日の真夜中頃、辺りが明るくなって月の使者がやってきました。翁や兵士たちは戦おうとしますが、彼らの前では無力となってしまいます。かぐや姫は、悲しむ老夫婦と帝に着物と手紙、そして不死の薬を渡します。月の使者に天の羽衣を着せられたかぐや姫は、今までのことを全て忘れて月に帰って行きました。

老夫婦は、その悲しみから病気になってしまいます。帝も酷く悲しみ、かぐや姫がいなくては不死の薬も意味がないと、天に一番近いと言われる駿河の山で、かぐや姫から送られた手紙と不死の薬を焼きます。手紙と不死の薬を焼く時、帝が大勢の兵士を引き連れて山に登ったことから、以降その山を「兵士が富む」と「不死の薬」をかけて、富士の山(不死の山)と呼ぶようになりました。

以上が『竹取物語』のあらすじです。童話『かぐや姫』とは少し異なる部分もあったのではないでしょうか。最後のパートでは、富士山の名前の由来が語られているのも面白いですね。日本で一番高い山である富士山ですが、実はその名前の由来ははっきりとはわかっていません。他に比べようがない唯一無二の高峰という意味で「不二山」という説など、諸説ある中のひとつとして、『竹取物語』で書かれた由来も挙げられているそうですよ。

なぜかぐや姫は地球にやってきたか?

さて、あらすじを一通り見て、結局かぐや姫はどうして地球にやってきたのか、なんて疑問を持った方もいるのではないでしょうか。月からの使者はかぐや姫について、罪を犯したがために汚らわしいこの世界にやってきたと説明しています。罪をつぐなう期限が過ぎたため、迎えに来たというのです。しかし、かぐや姫がいったいどんな罪を犯したのかについては、一切触れられていません。『竹取物語』の最も大きな謎であると言えるでしょう。

唯一ヒントとなりうるのは、流罪にあったというところかもしれません。「流罪」という刑は今の私たちには馴染みがありませんが、この物語が書かれた時代には、流罪はとても重い罪でした。今までの地位が通用しないばかりか、場所によっては環境が悪く、食べるものが十分に手に入らないこともあったからです。身分の高い人でも政治犯となると、流罪を受けることになりました。

月の使者はかぐや姫に対して丁寧な言葉遣いで接しており、彼女が月で高い身分にあったことが読み取れます。そんな高貴なかぐや姫が地球という下賤な場所に流されてしまったのですから、よほどのことをしでかしたのでしょう。どんな罪を犯したのか想像してみても、また違った角度から『竹取物語』を楽しめるのではないでしょうか。

まとめ

『竹取物語』が現存する日本最古の物語であることは初めにご紹介しましたが、さらに日本最古のSFであると言われることもあります。主人公であるかぐや姫が月からやってきた存在、つまり宇宙人であると読み取れることがその所以でしょう。しかし当時の人たちは月を天国のような場所として捉えていましたから、“SF”的な宇宙人と表現するよりも天の世界からやってきた天女とする方が正しいのかもしれません。いずれにせよ、竹から生まれることや、たった3ヶ月で年頃に成長することなどで普通の人間とは違う様子を序盤から描き、帝の前で影となって消えてしまう描写を経て、実は人間ではないことを明かすといういわゆる伏線回収は、物語として非常に優れた構成であるということには間違えないでしょう。また、かぐや姫によると月の都の人たちには感情が存在しないそうですが、そんな世界からやってきた彼女が、老夫婦の元で人間として愛情深く育てられてことで感情を芽生えさせ、最後には老夫婦や帝に思いやりをみせたところからは、人の愛の大切さという時代を越える教訓を見出すことができます。

そして、謎の多い『竹取物語』にはこれまで多くの解釈がなされています。現代語訳ひとつとってもその訳者には様々な顔ぶれが名を連ね、それぞれ違う楽しみ方をすることができます。スタジオジブリの映画『かぐや姫の物語』ではかぐや姫の「罪と罰」にスポットを当てており、独特な世界観を楽しむことができるためおすすめです。ぜひあなた好みの1作品を見つけてみてはどうでしょうか。

1000年の時を越えて、『竹取物語』は数えきれないほどの人たちを魅了してきました。あなたもこの謎と魅力に溢れる不思議な物語をもう一度楽しんでみてはどうでしょうか。

なお、お勉強の事で困ったことがありましたら、私たち家庭教師にもご相談ください。

この記事を書いたのは

家庭教師ライター S.F

家庭教師ファーストの登録家庭教師。お茶の水大学文学部在学。小学校教員を目指しています。

著作・制作

家庭教師ファースト/株式会社エムズグラント

『質の高いサービスを、良心的な価格で』をモットーに、全国で20年以上家庭教師を紹介しています。実際に担当する教師による体験指導受付中。教育に関する相談もお気軽に。

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