家庭教師ファースト教育コラム中学受験

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【国立中学】の特徴と受験の極意について、国立中学卒業生が解説

  • 中学受験
  • 2021.11.23
  • 現役医大生ライター I

私立中学の箸休め程度に受けられることが多い国立中学。
実態をあまり知らずに受けてしまう人も多いのではないでしょうか。
私立の併願先としてならば、特別な対策なしで国立中学の過去問を数年分こなして受験すれば良いです。
しかし、国立一本の方は、周りに同じ境遇の方が極めて少なく、国立中学の情報の集め方が分からなかったり、どのように対策すればよいのか分からなかったりするのが実情だと思います。
 
実際私自身がそうでした。
国立のみ二校を受験したのみで、私立中学は受験していません。
まわりにそのような友人はおらず、肩身が狭かったです。
そんな思いを皆さんにはしてほしくないので、まず、国立中学とはどのような中学なのか、そして次に国立中学の対策について書いていきたいと思います。

国立中学の特徴① 私立中学とは全く別物

国立中学の特徴① 私立中学とは全く別物

皆さんは国立中学に対してどのようなイメージを持たれているでしょうか。
学費が安い、特別な教育が受けられる、秀才の集まり、などなどでしょうか。
概ねあっています。
では、私立中学との違いは何ですかと聞かれたら、答えに窮するのではないでしょうか。
ここでは、実際に通ってみて分かった、国立中学と私立中学の違いについて説明していきます。

国立中学には進学実績は必要ない

いきなり驚かれる話題かもしれません。
国立中学は、進学実績を上げることを目標としていません
今これを読んでいる人は、子どもに受けさせようと考えている国立中学と、それと同じ偏差値の私立中学の進学実績を見比べてみてください。
おそらく、私立中学の方が、進学実績が良いのではないでしょうか。
 
私立であれば、その年の進学実績が翌年の受験の難易度や倍率にも直結するため、どの学校も力を入れているところであります。
しかし、国立中学は、高校進学実績、中高一貫校の場合、大学進学実績を高めることを目標としていません。
なぜなら、国直轄の学校であり、進学実績で人気を保持する必要がないからです。
 
では、何をもってして、国立中学の人気は保たれているのでしょうか。

国立中学の存在意義

国立中学は、新しい教育の実践の場です。
私が国立中学生だったのは10年以上前ですが、すでに電子黒板を用いた授業、パソコン教室で一人ひとりマイクに録音しての厳密なスピーキングテストなど先進的な取り組みがなされていました。
 
このような新しい取り組みをわが子に実践させたい人たちによって人気が保持されているのです。
良し悪しや向き不向きがあるので、このような先進的な取り組みのすべてが良い方向に向かうとは限りません。
しかし、教育熱心な保護者の心をつかんで離さないという現実が、一定の倍率を維持している証拠です。

国立中学の特徴② 授業内容の一例

国立中学の特徴② 授業内容の一例

では、国立中学の人気を保つ秘訣である、先進的かつ斬新な取り組みの例をご紹介させていただきます。
以下に挙げるのはほんの一部で、授業の多くが公立とは異なります。

毎回スケッチ!?

これは入学してすぐの、理科の授業についてです。
私の中学の理科は必ず二時間連続でした。
中一の理科は、まず、植物の分類を習います。
その時に、毎回1時間目は、校庭や中庭、裏山などで見つけた植物のスケッチをします。
2時間目に、スケッチした植物を調べ、それからその植物が被子植物なのか、裸子植物なのかなどの分類を調べていくという授業でした。
植物の分類は体系的に学ぶべきです。
しかし、同時に普通に学ぶと興味を持ちにくい分野でもあります。
それをスケッチで興味を維持しつつ学ぶという斬新な切り口からの授業を展開していました。

秀吉の朝鮮出兵を別の視点から学ぶ

社会の歴史の分野の授業の話です。
天下を統一した豊臣秀吉が朝鮮出兵をする授業に差し掛かったころ、韓国から先生が授業見学のためにたくさんやってきました。
そこで、韓国の先生方から、韓国では秀吉の朝鮮出兵はどのような切り口で教えるのかというのを実際に学ぶ機会がありました。
 
日本では、朝鮮出兵、少し詳しく言うと、文禄・慶長の役と習います。
韓国では、壬辰倭乱(じんしんわらん)、丁酉倭乱(ていゆうわらん)という風に言います。
このようなマニアックな内容が授業として展開されたため、テスト範囲に韓国の先生の授業内容が入り、そのときの定期テストでは、大問1の1問目の解答が「壬辰倭乱」であり、学年平均が極めて悪かった記憶が鮮明に残っています。

五心の作図全部やるんですか…

中学数学の幾何は、中1で平面図形、空間図形、中2で証明、合同、中3で相似、酸平方の定理、円周角の定理を習います。
五心は、外心、内心が図形の性質の一部として少し扱われるくらいで重心は応用向け、垂心と傍心に至ってはほとんどの学校で習いません。
 
しかし、私の学校では、五心すべての作図及び五心の性質が試験範囲でした。
五心の作図をすべてこなせた人は2割ほどしかいませんでした。
当時は、マニアックなことばかり習わされて、定期テストは激ムズで最悪でしたが、最難関私立高校の入試問題がすんなり解けたときだけありがたかったなあと思いました。

国立中学の特徴③ まなびの意欲が強い人が多い

国立中学の特徴③ まなびの意欲が強い人が多い

国立中学の特徴が少しでも理解していただけたでしょうか。
国立中学では、話し合い、発表会などのディスカッションが多いのも特徴の1つです。
とにかく、生徒のまなびの意欲と自主性を引き出すことを目標としています。

国立中学生は自由課題も本気で取り組む

国立中学は、まなびの意欲が強い人の集まりなので、夏休みの自由課題や自由研究のクオリティは凄まじいです。
JICAの作文を書いた友人が内閣総理大臣賞を受賞して、夏休みにベトナムに研修に行っていました。
また、自由研究では自然科学観察コンクールで入賞する人がいました。

受験対策にはあまり向いていない

国立中学で展開される特色ある授業はいずれもおもしろいものではありますが、受験対策からは逸れてしまうことが多く、最短経路で難関高校に受かりたい人には向いていません。
私立中学受験で失敗し、仕方なく国立中学に入学した友人は、地獄のような3年間だったと回顧していました。

進学先の特徴

まなびの意欲が強い人たちの集まりなのに、なぜ進学実績はよくないのでしょうか。
ここでは、進学実績の一部をご紹介いたします。
高校受験を念頭に述べたいので、一般的な公立中学と比較します。
 
一般的な公立中学は、上位の公立高校や私立高校の進学を目標とすることが多いと思います。
しかし、国立中学生は、自分の学びたい分野に素直なので、自分の興味のある分野が強い高校に進学します。
例えば、ロボットに興味のある人は、国立高専に進学する人が多いです。
また、国立中学の授業スタイルが好きな人は、教育大学附属などの国立高校を受験する人が多いです。
留学生との交流で海外とかかわりたいなと思った人は、高校のカリキュラム内に留学するコースのある高校へ進学する人が多いです。
 
このように、多種多様な進学先があるため、一様に上位の学校を目指す学校よりは、難関校への進学実績は劣ります。

教育実習生が多い

教育実習は毎年、春の2週間と秋の4週間の2回あります。
普通は、1クラスに1名の教育実習生がつくことが多いですが、国立中学では、6~8人つくのが当たり前です。
教育実習生のみなさんは、まなびの意欲が強い国立中学生につまらない授業をしないように、担当教員と熱心に授業計画を練って授業をしてくださいます。

行事に本気で取り組む

体育祭、文化祭などの行事には、1カ月以上かけて準備を行うことが多いです。
企画や当日の司会進行は生徒がするなど、生徒の自主性が前面に出ます。
友達と意見を出し合い、行事を作り上げていく中で、クラスを取りまとめる力、意見を言う力、相手の意見を聞く力など様々な力を身に着けることができます。
中3で受験前であっても行事には全力で取り組む人が多いです。
ここで、受験対策に専念したい人は苦しむことになります。

国立中学の特徴④ 国立中学への適性

国立中学の特徴④ 国立中学への適性

以上の国立中学の特徴をまとめると、まなぶ意欲が高くて、積極的に発言し、難関校を目指しにくいというイメージを抱くかもしれません。
ただ、このような特徴を兼ね備えた小学生は、世の中にそう多くはいません。

はじめはまなぶ意欲が強くなくてもよい

しかし、私は、上記の特徴を持った人だけが国立中学に適性があるといいたいのではありません。
国立中学の特徴を理解したうえで、受験し、入学してほしいのです。
事前にどんな学校か知っていれば、入学後に後悔することはないと思います。
まなぶ意欲は高くなくても構いません。
先生方がそれを引き出してくれます。
積極的に発言できなくてもかませません。
周りがとても積極的に挙手や発言をするので、そのうちするようになります。

受験対策は塾に任せるのも手

受験対策が後手に回る学校を、敬遠したくなる気持ちは分かります。
ですが、昨今、塾無しで難関校に楽々と合格できる人はそう多くありません。
進学のために塾がほぼ必須であることを考慮すると、塾に受験対策を任せて、学校では面白いことを学びに行くと棲み分けをしてみてもいいかもしれません。
学校でまなびの意欲が高められれば、塾での学習効果が高くなります

国立中学の受験対策について

国立中学の受験対策について

学校ごとに全く異なる入試科目

私立中学であれば、3科目型か4科目型かで社会の有無を調べるだけでいいので、基本的にどこを目指すにしてもやることは変わりません。
しかし、国立中学は学校ごとに試験科目が大きく異なるので注意が必要です。
志望する中学の入試科目は、あらかじめ早い段階で調べておきましょう。

主要4科目の対策について

国立中学は公立中学に準拠しているので、私立受験算数で特有の「旅人算、植木算、ニュートン算」などの特殊計算は基本的に出題されません。
しかし、小学校の教科書ができたらだれでも解ける、という入試問題でもありません。

算数

算数は、表から読み取れる数の変化を題材にしている問題が特徴的です。
慣れればなんてことない問題なのですが、初めはどこに注目したらいいのか分からないです。
表の意味をしっかりくみ取って計算する必要があります。
このような対策は取りにくいのですが、普段から意識できることとしては、文章題を解くときに、数字を適当に掛けたり割ったりするのではなく、なぜそのような立式をするのか説明できるようにしておくと、良い訓練になります。
割るものと割られるものの関係を逆にしたことがある方には必須のトレーニングになります。
また、単位当たりの量を求める計算の意味をきっちり抑えられていないと、割合や速さが曖昧なままである可能性が高いです。
なんとなくわかるし、7~8割くらいの点数は小学校で取れるという程度だと、国立中学の問題は苦しい可能性が高いです。

国語

国語は、表現力が問われます
具体的には、選択や抜き出しの問題ではなく、自由記述の問題が多いです。
普段から、記号なら正解できるけど、自由記述なら全くかけない、あるいは傍線の近くから適当に抜き出しているだけだと、かなり苦戦します。
80文字くらいの長い記述も出題されることがあります。
普段から、記号問題であれ、なぜその選択肢を選んだのか言語化できるように訓練しておくのがいい対策になります。
抜き出しや短い記述でも、傍線の近辺から適当に抜き出す癖のある人はすぐにやめて、主語は何だろう、筆者の言いたいことは何だろうなどと考える癖をつけなければなりません。

社会

社会は、気温、農作物、人口などの統計を用いて、読み取りをさせたり、計算をさせたりする問題が出題されることが多いです。
初めて見る情報を的確に読み取らなければならないので、初めて見る情報=未知なもの、と思っているといつまでも点が取れないので、初めて見る情報=読めばわかる、という意識で取り組む必要があります。
読み取るだけではなく、新旧の2つの資料を並べ、変化とその理由を問う難問も見られます。
比較するときは、同じ項目に絞って新旧を見るということが大切です。

理科

理科は、実験操作がストーリーのように連なっていて、間違いを記述で訂正させるようなものがあります
また、前の設問で必要であると答えたもの(例えば植物の成長には肥料が必要かどうか)が本当に必要であるか確かめる実験を答えるといったものがあります。
また、学校によっては、国語と社会を1つの科目、算数と理科を1つの科目として試験する学校があったり、理科と社会はまとめられる学校があったりします。
 
国語と社会がまとめられると、説明文の題材が歴史的なものになって、普通の読解問題の中に、小問の1つに歴史のことを聞いてくる問題が混じっていたりします。
落ち着いて対処すれば、この問題は本文から探す問題じゃなくて、社会の知識を知っているか試されているとわかるのですが、なかなか国語と社会の融合問題を経験することがないため、もし、このようなタイプの学校を狙う場合、似た傾向の中学の入試問題で練習しておいてもいいかもしれません。
 
算数と理科がまとめられると、理科的なテーマの問題の中に結果からしっかり計算させてくる問題が混じっていることがあります。
あるいは、物体を立てたときの影の長さから太陽の南中高度を推定し、季節を答えさせるような問題もあります。
高度な計算を要求されるというよりは、理科的な要素をしっかり押さえたうえで、教科書の暗記だけでなく、与えられた情報から計算して答えを導き出すという作業が重要です。
 
理科と社会が融合した問題は、統計で農作物を都道府県ごとに比較している問題の中に、急に植物の分類を問うてくることがあります。
また、北海道と沖縄を比較しているときに、動植物の季節における変化や気候と絡めて出題されることもあります。
科目を越えての融合問題であっても、基本的には、各科目の対策を充実させることが先決です。
これこそが、どこを受験することになっても不変の土台となります。
小6の秋以降、受けるところが絞られてきてから、上記のような特殊な対策をしていくという方針が賢明です。

面接、作文、音楽、図工、家庭科などの副教科について

多くの学校で、主要4教科以外に副教科の試験を課してきます。

面接

面接では、正解を答えるというよりは、自分の意見を素直に説明できるかが重視されています
なので、模範解答の暗記(志望動機など)ではなく、普段から自分の思っていることを口にできる習慣を作っておくとよいです。
好きな食べ物は何ですか?と言った全然面接のテーマらしくない質問が飛んでくることもあります。
国語の記述問題に理由付きで答えるのがいい訓練になります。

作文

作文では、読書感想文のような自由記述というよりは、説明文のような資料が与えられてそれの読み取りと意見を書く問題や、イラストを見て良いところ、悪いところを指摘して、より良くする方法や改善点を示す方法を説明するような「条件付作文」が多くなっています
優先座席には賛成か反対かなどの定番の作文は、良い訓練にはなりますが、そのまま入試に出題される可能性は高くないです。
 
作文の制限文字数に注目してみてください。
100字以内のような短い作文は、要約能力が試されています。
読み取りの場合は、無駄なことは書かず、抜き出しよりもうまくまとめる努力が必要です。
自分の意見の場合でも、本当に伝えたいことを端的に書く練習をする必要があります。
逆に、文字数が長い場合は、主張を体系的に列挙したり、具体例を交えて説明したりするなどの能力が求められます。
 
受験を考えている学校の過去問から、傾向を探っておくべきですが、夏までは両方の対策を並行してやっておくことをお勧めします。
なぜなら、これらの能力は、作文の試験対策だけでなく、国語の対策にもなるからです。

音楽、図工、家庭科などの副教科

音楽、図工、家庭科などの副教科については、数年前まで、非常に難解で対策が難しい実技試験を課す中学がいくつかありましたが、正直、まともにできている人は合格者の中でも少なく、近年は廃止の傾向が強まっています。
廃止されても、図工は、算数の空間図形に組み込まれたり、音楽は、社会の歴史の時代ごとにどんな楽器を使った音楽が有名だったかを問われたり、わずかに残っていることがあります。

まとめ

以上、国立中学の特徴と入試対策についてお伝えしました。
 
謎の多い国立中学ですが、特徴を知っていただけましたら幸いです。
国立中学は、進学対策に不向きであるという短所もありますが、それを補うだけの十分な長所があります。
こどもに何を重視するかで、私立か国立かの選択をすることになるかと思います。
 
国立を選択肢に入れる場合は、基本的な4科目の勉強に加えて、記述問題に対する個別の添削をしていただけるような存在がとても心強いです。

この記事を書いたのは

現役医大生ライター I

家庭教師ファーストの登録教師。和歌山県立医科大学 医学部に在学中。国立中学受験を経験。学生ながら、指導人数は20名以上。

著作・制作

家庭教師ファースト/株式会社エムズグラント

『質の高いサービスを、良心的な価格で』をモットーに、全国で20年以上家庭教師を紹介しています。実際に担当する教師による体験指導受付中。教育に関する相談もお気軽に。

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