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家庭教師ファースト教育コラム理科・科学の雑学

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【人体の雑学8選】顕微鏡で見る人体のミクロな世界を現役医学部生が解説

  • 理科・科学の雑学
  • 現役医学部生ライター I

私たちの体は37兆個の細胞からできていると言われています。そして、例えば、目の細胞は光を受容する、筋肉の細胞は収縮するというように、それぞれの細胞は各々の機能を持っています。細胞は非常に小さい構造ですので肉眼で見てもわかりません。

しかし、私たちの組織を薄くスライスし顕微鏡で観察してみるとそれぞれの器官や組織には全く形態の異なる細胞がたくさん存在する世界が広がっています。今回は、そんな人体のミクロな世界について、細胞から見た「人体の雑学」を現役医学部生の筆者がお伝えしていこうと思います。

なお、お勉強の事でお困りごとがありましたら、是非私たち家庭教師にご相談ください!また、家庭教師の仲間も募集中です。ご興味のある方は下記リンクより是非ご検討ください。

【人体の雑学①】血液は酸素を運ぶだけではない?

血液は酸素を運ぶだけではない?

みなさん血液というとどういったイメージを持つでしょうか?赤い液体とか酸素を運ぶとかそういったイメージの方が多いと思います。もちろんそれは正しいのですが、血液中には赤くない細胞もたくさんあり、さらに酸素運搬以外に多くの機能を持った細胞もたくさん存在しています。

止血に必要な血小板

まずは血小板を紹介しましょう。血小板は厳密にいうと細胞ではなく巨核球という細胞の断片という表現が正しいです。この血小板、何をしているかというと怪我をした際の止血に非常に重要な役割を担っています。

まず、怪我をした際に出血することがありますが、これは血管が破れることで生じます。つまり止血するためには血管の破れた場所を塞がなければいけません。血小板は血管の破れた部分を塞ぎ、血管の応急処置を行います。

しかし、あくまで応急処置ですのでその後にきちんと血管を修復する必要があります。この際、赤血球をフィブリンという繊維で絡めとることで血餅、つまりかさぶたのような構造を傷口に形成することでしっかりと止血することができます。

ここでも血小板は血餅の形成に必要なフィブリン合成を促すという重要な役割を担います。以上述べたことから、血小板は止血には必要不可欠な構造であるとわかります。

バイ菌から体をまもる免疫細胞

血液には他にもウイルスや細菌が体内に入ってくるのを防ぐ役割を持つ免疫細胞が数多く存在しています。その中でも今回は顆粒球とリンパ球について説明しようと思います。顆粒球はその名の通り細胞の中に粒々がたくさん存在している細胞です。大きく分けて3つ、好中球、好酸球、好塩基球に分けられます。

それぞれの細胞にはそれぞれ異なる特徴や役割があるのですが、基本的には3種類とも自然免疫系といって全ての病原体に対して広く浅く対応する免疫システムを担っています。一方の、リンパ球は大きく分けてT細胞とB細胞という2種類の細胞に分かれるのですが、こちらのリンパ球は獲得免疫といって一度かかってしまった病気にかかりにくくなるような免疫システムを担っています。

以上述べた以外にも免疫に関わる細胞はたくさん血液中に流れています。このことからわかるように血液は酸素を運ぶためだけの液ではないのです。

【人体の雑学②】皮膚にある変わった構造

皮膚にある変わった構造

続いては皮膚のミクロな世界についてお話ししましょう。皮膚というとそれほど複雑な構造ではないんじゃないかと考えている方も多いかと思います。しかし、思いの外いろいろな構造物が見られます。

皮膚の監視役

私たちの皮膚は常に外部の病原体に晒されています。ですので、病原体が体内に入ってこないようにするには皮膚で侵入を防がなければいけません。もちろん、皮膚自身物理的なバリアになっているのですが、皮膚がめくれたり傷ついた際には病原体は体内に入ってくる可能性があります。

そこで役立つのが先ほど述べたような免疫細胞です。免疫細胞は病原体を捕食することで排除します。ですので、物理的なバリアを乗り越えてきた病原体を撃退することが可能です。皮膚にはこのような免疫細胞がたくさん存在します。

感覚の受容

さらに、皮膚は触覚や痛覚といった感覚を司っています。これはみなさん自身生活の中で実感しているでしょう。ミクロの世界で見ても触覚を司っている構造が存在しています。初めて耳にする方も多いと思いますが、私たちの皮膚にはマイスナー小体、ファーター・パチーニ小体という丸い神経細胞の集合体のような構造が見られます。

一方の痛覚はマイスナー小体やファーター・パチーニ小体のような特殊な構造で受容されません。神経の末端で受容されます。しかし、1本の神経は細いですので顕微鏡で見ても判別するのは難しいです。

寒いとき唇が紫色になるのはなぜ?

冬の非常に寒い日、唇が紫色になったという経験があるでしょうか?寒いときはできるだけ血液が冷えないように、温度の低い皮膚の表面に血液が流れないような仕組みを私たちの体は持っています。それによって唇の皮膚表面の血流が滞り紫色になるのです。

では、どのようにして皮膚表面に血流を流さないようにしているのでしょうか?皮膚の深部には血管のバイパスのようなものがあります。そのバイパスは普段は閉じているのですが、寒い日に皮膚表面に血液を流すと血液が冷えて体温が下がってしまうのでそうならないように、気温の低い条件下でのみバイパスが開通します。よって、血液が皮膚の深いところを流れることが可能になるのです。

このバイパスは動静脈吻合(ふんごう)またの名をホイヤー・グローサーの器官と呼びます。その名の通り動脈と静脈が一つの鞘に入ったような構造をとっており、寒くなった時にその動脈と静脈の間が開通するのです。

【人体の雑学③】脳は神経細胞だけではない?

脳は神経細胞だけではない?

次に脳を顕微鏡で覗いた世界についてお話ししましょう。脳といえばどのような細胞があると考えますか?神経細胞が多いというイメージの方が多いでしょう。しかし、実際には神経細胞以外の細胞が思いの外たくさん存在しています。今回は、その種類と役割について説明していきたいと思います。

素早い情報伝達に必要な細胞

みなさんは跳躍伝導という言葉を聞いたことがありますか?私たちの神経は電気信号によって情報を伝えるのですが、剥き出しの神経細胞はそれほど早く信号を伝えることができません。しかし、神経の一部を絶縁体で覆ってあげることによってその部分でより速く信号を伝えることができます。

このような、速い伝達のあり方のことを跳躍伝導と言います。先ほど述べた通り、この速い伝導には絶縁体が必要となります。私たちの体にはその絶縁体あの役割を示す細胞が存在しています。この細胞のことを抹消神経ではシュワン細胞、脳のような中枢神経ではオリゴデンドロサイトと呼びます。

この細胞は神経細胞を鞘のように囲っています。実質有髄神経と呼ばれる神経ではその大部分がこれらのシュワン細胞やオリゴデンドロサイトによって覆われているため、このことからも神経系のうちいかに多くの割合を占めているかが想像できるかと思います。

実際、この絶縁体は私たちの体には非常に重要です。例えば、多発性硬化症と呼ばれる疾患では免疫の暴走によって脳のオリゴデンドロサイトが損傷を受けます。これによって脳はスピーディーに情報を伝えることが難しくなり様々な神経症状をきたすことがあります。

神経細胞のサポーター

続いてアストロサイトと呼ばれる細胞を紹介しようと思います。アストロとは星という意味でサイトとは細胞という意味です。この細胞は星のような形をしていることからその名がつけられました。

このアストロサイトですが役割は様々でありまさに脳神経細胞のサポーターとも呼べる存在です。主に神経細胞の栄養状態を管理したり、物理的に神経細胞を支持したりします。

中でもこの細胞には面白い役割があって脳血液関門を形成します。脳血液関門って何?と思った方がほとんどかと思いますが、これは脳の神経細胞と血液との間で物質の移動を制限する役割のことを言います。

脳は私たちの体の司令塔でありいわば体で最も重要な器官です。ですので、血液中の物質全てが脳にさらされると場合によっては脳にとって悪影響のある物質が脳に接触することになります。脳血液関門はそのような事態を避けるため血液中の物質を選択的に脳に輸送するという役割を持っています。

アストロサイトはこの重要な関門を構成する細胞であると考えられています。具体的には脳内を走っている毛細血管を全てアストロサイトが覆うことによって物質のやり取りを制限しています。このことからもアストロサイトが脳内で一定以上の体積を占めていることがわかります。

脳にある免疫細胞

さらにもう一つ脳内に存在している変わった細胞をご紹介しましょう。続いてはミクログリアと呼ばれる細胞です。この細胞は脳内の治安維持の役割を担っています。私たちは常に外界にいる細菌やウイルスといった病原体に晒されており、常に感染症と隣り合わせにいます。

もし体の司令塔である脳が病原体によって犯されたらどうでしょうか?場合によっては死に至る可能性があり、それを免れたにしても後遺症が残ってしまう可能性は十分に高いと言えるでしょう。ミクログリアは脳内に入ったウイルスや細菌を退治してくれます。これにより、大事な脳は病原体の侵入から守られているのです。

ミクログリアは外敵からの防御以外にも重要な役割を示すと考えられています。病原体にかかわらず脳内では有害な物質が蓄積することが度々あります。例えば、アルツハイマー病という病気について聞いたことがある方も多いかと思いますが、この病はアミロイドβと呼ばれる有害物質が脳に蓄積することで生じると言われています。

ミクログリアはこのアミロイドβを貪食し、アルツハイマー病の進行を防いでいるという説があります。他にも、死んだり老化した神経細胞を除去するなど、脳が正常に機能できるように様々な異物を排除する機能があると考えられています。

以上述べたように、私たちの脳は実は神経細胞は一部であり、ほとんどが今まで述べたような神経細胞以外の細胞(この細胞のことをまとめてグリア細胞と呼びます)でできておりのです。一説には人のグリア細胞は脳の細胞の9割以上を占めるとも言われています。

私たちの脳は神経細胞同士の情報のやり取りについてもよくわかっていないことが多いのですが、その話も脳全体で見れば10%にも満たない話なのです。脳は実に謎に満ちた器官であると言えるでしょう。

【人体の雑学④】骨はたくさんの柱でできている?

骨はたくさんの柱でできている?

続いて、骨について紹介しようと思います。まず、みなさん骨って聞くと何をイメージするでしょうか。硬い組織でカルシウムがいっぱい含まれているという意見の方が多いと思います。では、骨って細胞でできているのか?と聞かれたらなんと答えるでしょうか?

おそらく骨が細胞でぎっしりの組織であるという認識をしている方は少ないのではないでしょうか?私たちの骨は骨細胞という細胞がぎっしり詰まった構造をしています。そしてその骨細胞がとる構造が少し変わっています。

ハバース系の構造

骨細胞自身はたくさんの突起を伸ばした形状を取っているのですが、これらの細胞の集合体は実は真ん中が空洞の柱のような(バームクーヘン状)の構造をとっています。そしてそのバームクーヘン状の柱が無数に並んだものが骨なのです。ちなみにその一つ一つの柱構造のことをハバース系と呼びます。

なぜバームクーヘンのような真ん中が空洞の構造をとっているのでしょうか?骨細胞自身もちろん生きた細胞ですので、活動するためにはもちろん酸素や栄養分が必要であり、さらに活動の結果生じた老廃物も細胞の外に出さなければいけません。

酸素や栄養、さらに老廃物を運ぶためには血管が必要です。もうお気づきの方もいるかと思いますがこの真ん中の空洞は何もないわけではなく血管が通っているのです。この血管のことをハバース管と呼びます。

骨のリモデリング

実はこのハバース管にはもう一つ大きな役割があります。キーワードは骨のリモデリングです。リモデリングって何?と思うかと思います。英語で書くとremodeling、日本語に訳すと再び形成するという意味です。

骨は思いの外速いスピードで破壊と構築を繰り返していると言えます。そして破壊を担う細胞を破骨細胞、構築を担う細胞を骨芽細胞と呼びます。この2種類の細胞は血液にのって骨に到達します。

ここでハバース管が重要な役割を担います。ハバース管は血管ですので、破骨細胞や骨芽細胞も当然ハバース管の中を通ります。この際、破骨細胞が骨を破壊し、その後破壊された部分を骨芽細胞が修復するのです。

骨芽細胞が骨を修復したり、成長させたりする際には当然ですがハバース管を中心に骨形成を行います。このことからもなぜハバース系はハバース管を中心にバームクーヘン状をとっているのかが想像できるでしょう。まさしく、年輪を形成するようにハバース系はどんどん太くなっていくのです。

【人体の雑学⑤】筋肉はしましまに見える?

筋肉はしましまに見える?

続いて、筋肉に関するお話をしようと思います。筋肉が収縮したり弛緩したりするという事実は普段の生活からも感じている方が多いかと思います。しかし、いざそのメカニズムを示しなさいと言われると少し当惑するでしょう。

筋肉が伸び縮みするメカニズム

筋肉が弛緩したり収縮したりするメカニズムは細胞レベルつまりミクロの世界で示すことが可能です。筋肉はたくさんの筋細胞と呼ばれる細胞から構成されています。そしてこの筋細胞は非常に規則正しく並んでおり、その結果、鶏肉や魚肉のように筋肉は繊維質な組織となっています。

この繊維状の構造はそれぞれが収縮や弛緩を行うことができます。そして、その繊維が束になることで筋肉全体が収縮や弛緩を行うことができるのです。では繊維状の構造はどうして弛緩や収縮を行うことができるのでしょうか?

この答えは筋細胞の構造にあります。筋細胞の中にはミオシン、アクチンという2つの繊維状の構造があります。ミオシンとアクチンは同じ向きに規則正しくならんでいます。筋肉の収縮や弛緩はミオシンがアクチンに働きかけることによって2つのアクチンの間の距離が伸びたり縮んだりすることで生じます。

ここで思い出してください。アクチンとミオシンは同じ向きに規則正しく並んでおり、筋細胞自身も繊維状に規則正しく並んでいます。ということは、アクチン間が縮んだり伸びたりすれば、細胞全体が伸び縮みすることになり、それは筋肉の繊維が弛緩と収縮をおこなうことを指します。

つまり、それぞれのアクチン間の距離の変化によって筋肉全体が弛緩収縮運動を行うことが可能というわけです。

顕微鏡で筋肉を見ると

さて、筋肉は顕微鏡で覗くと実はしましまの構造をとっています。それはなぜでしょうか?筋肉を繊維に垂直にスライスしてみると、大きく3つの領域に分けられます。まず一つ目はI帯といって、この断面ではアクチン繊維の断面のみが観察されます。

次に、A帯といってこの断面ではアクチンとミオシンの繊維双方の断面が確認できます。最後に、H帯といって、この断面ではミオシンの繊維のみの断面が確認できます。このことからわかるように、筋肉ではアクチンとミオシンは部分的(つまりA帯)にしか重なっていません。

そして、この部分では2種類の繊維が見られることから想像できるように、A帯は顕微鏡で見ると濃い色に見えます。一方の他のI帯やH帯は1種類の繊維しか走っていないことから想像できるように顕微鏡で観察すると薄い色に見えます。これが、筋肉を顕微鏡で観察するとしましまに見える原因なのです。

【人体の雑学⑥】小腸の細胞は栄養を吸収する細胞だけではない

小腸の細胞は栄養を吸収する細胞だけではない

さて、みなさん小腸と聞くと何をイメージするでしょうか?栄養分を吸収する器官であると考えている方が多いかと思います。では、小腸の細胞は栄養を吸収する細胞だけでしょうか?実は小腸には栄養吸収を担当する細胞以外にも数多くの細胞が存在しています。

ゴブレット細胞とは?

まず、ゴブレット細胞(杯細胞)について説明しようと思います。この細胞はその名の通り杯のような見た目をしています。では何をしている細胞なのでしょうか?小腸の中はドロドロになった食物が通ります。ということは、円滑に食物を運ぶためには小腸と食物の間に潤滑油のようなものが必要です。

もしこの潤滑油がなければ、食物を運びにくい上に、脆い小腸の粘膜が食物の移動に際して傷ついてしまう可能性があります。この潤滑油となる粘液を分泌しているのがこのゴブレット細胞なのです。

基底顆粒細胞とは?

続いて、基底顆粒細胞を紹介しようと思います。みなさんは、ホルモンという言葉を聞いたことがあるでしょうか?人体におけるホルモンはいわゆる情報伝達物質です。例えば、よく耳にする成長ホルモンは骨や筋肉に働きかけて、細胞分裂して組織を大きくしなさいという指示を出しています。

基底顆粒細胞はホルモンを分泌する細胞です。ではどうして腸の細胞がホルモンを分泌する必要があるのでしょうか?例えば、小腸の中が酸性に傾いたとします。この際腸内の環境はあまりよろしくありません。ですので、塩基性の物質を腸の中に分泌することで小腸の酸を中和する必要があります。

一般に塩基性の物質を分泌できるのは膵臓だけですので、膵臓からの塩基の分泌を促す必要があります。ここで、ホルモンが役立ちます。小腸と膵臓は距離が離れていますが、血管を通じてつながっています。ホルモンは血管を経由して器官から器官に伝わりますので、小腸は酸を感知して、膵臓に塩基性物質を分泌してくださいという情報を伝えることが可能です。

腸にも存在する免疫を司る細胞

他にも、腸には免疫を司る細胞がたくさん存在しています。みなさんは、腸内細菌という言葉を聞いたことがあるでしょうか?私たちの腸の中には夥しい数の細菌が生息しています。中には乳酸菌やビフィズス菌のような体にとってメリットのある微生物も生息しているのですが、一方で病原性のある悪い微生物も生息しています。

ですので、腸は微生物が悪さをしないような機構を兼ね備えています。まず、その一つとしてパネート細胞が挙げられます。このパネート細胞は端的にいうと抗生物質を分泌する細胞です。腸内細菌が増えすぎないように定期的に腸内細菌を駆除しています。

次に、パイエル板を紹介しようと思います。これは一言で言うとリンパ組織です。ですので、先ほど紹介した獲得免疫系に関わるB細胞やT細胞がたくさんこのパイエル板の中に存在しています。獲得免疫は一度感染した細菌に2度と感染しないための免疫システムであると先ほど述べました。ですので、ここでは私たちの体にとって過去に害になった菌を選択的に排除します。

以上のように、腸管には栄養の吸収意外にも粘液の分泌やホルモンの分泌、さらには病原体の排除といった様々な機能を持った細胞が存在しているのです。

【人体の雑学⑦】膵臓には「島」がある?

膵臓には「島」がある?

地図に載っていない島とは?

さて、みなさんはランゲルハンス島という言葉を聞いたことがあるでしょうか?この島はGoogleマップなどで調べても見つかることはありません。なぜなら、地図上には存在していないからです。ではどこに存在しているのでしょうか?

膵臓の組織を薄くスライスして顕微鏡で観察すると、点々と色の薄い細胞の塊が存在しています。これがまるで膵臓の組織に浮かぶ島のように見えたことからこの細胞の塊のことをランゲルハンス島と呼ぶようになりました。

膵臓といえば消化酵素を含む膵液を分泌する臓器であると捉えている方も多いかと思いますが、このランゲルハンス島は膵臓の周りの腺組織とは少し異なった特徴を持っており膵液分泌には関わりません。

インスリンとグルカゴンの話

では何をしている部分なのでしょうか?みなさんはインスリンやグルカゴンというホルモンを聞いたことがありますか?糖尿病に関係するホルモンとしてインスリンを聞いたことがある人は多いかと思いますが、グルカゴンについては初めて耳にするという人もいるかもしれません。

私たちは食事で取った栄養分を糖分に変換することでそれをエネルギーとして利用します。そして、その糖分は適宜血液を経由して筋肉などの組織に届けられます。ですので、全身の組織に常に一定量のエネルギーが行き渡るように血液に溶けている糖分の量は安定である必要があります。

しかし、食後には当然ながら外部から取り込まれた糖分が血液中に溶け込むため血糖値は上昇します。そのため食後には血糖値を下げてやる必要があります。この際に働くのがインスリンというホルモンです。

一方、空腹時や運動後など体がエネルギーを欲しているときには当然血液中に溶けている糖の量は少なくなっています。しかし、このままでは全身の組織がエネルギー不足になってしまい危険なので血糖値を上昇させてあげる必要があります。その際に重要なホルモンがグルカゴンです。

先ほど紹介した膵臓のランゲルハンス島にはα細胞とβ細胞の2種類の細胞があります。このうちα細胞ではグルカゴンを、β細胞ではインスリンを分泌しています。膵臓のほとんどの組織は膵液を分泌する腺房細胞と呼ばれる細胞からなるのですが、所々存在しているランゲルハンス島にはこの腺房細胞が存在せず、代わりに血糖値調整に関わるホルモンを分泌する内分泌細胞があるため、周囲とは異なった様相を示すのです。

【人体の雑学⑧】管だらけの腎臓の話

管だらけの腎臓の話

最後に腎臓を顕微鏡で覗いた世界についてお伝えしましょう。みなさん、腎臓というとどのようなイメージがあるでしょうか?体内の毒素を濾す部分とか尿を作る部分とかそういったイメージを持っていると思います。

腎臓にある不思議な球体

ではどのように体内の毒素を濾しているのでしょうか?体内で生成された老廃物は細胞の外に出ると液体に溶かすことで体外に排出しようとします。私たちの体でいうところのこの液体とはなんでしょうか?それが血液です。ということは毒素を濾すためには血液から毒素を取り出す必要があります。腎臓はそのための器官です。

腎臓には血液から毒素をこし出すための特殊な構造があります。この構造のことを糸球体と呼びます。その名の通り、血管が絡み付いた糸のような構造をとって丸まった外見をしています。この糸球体には密に血管が走っているので効率よくそこから不必要な物質を取り除くことができます。

腎臓は管だらけ

では腎臓って糸球体だらけなのでしょうか?実は、全体の体積で見ると糸球体は腎臓の一部を占めているに過ぎません。少し不思議に思うかもしれませんが、腎臓はその体積の大部分が尿細管という管で構成されています。それはなぜなのでしょうか?

糸球体は毒素のみをこし出すことができません。そのため、私たちの体にとって必要な栄養分なども毒素と一緒にこし出してしまいます。しかし、栄養分を尿中に排出してしまうのはもったいないですよね。ですので、糸球体を通った後にとおる尿細管という管で栄養分などの必要な物質を再び血液中に再吸収しているのです。

糸球体の役割はとりあえず血液に溶けているものをこしだし、細胞のような大きな物質を尿細管に送らないことなので体積が大きい必要はないのですが、その後、必要なものを再吸収するときには何が必要か吟味しながら吸収しなければいけません。そして不必要なもののみ体外に排出できるように尿を濃縮しなければいけません。それゆえ、尿細管は長くある必要があり、自ずと腎臓中でしめる体積が大きくなるのです。

まとめ

今回は顕微鏡で見る人体のミクロな世界について紹介しました。今回ご紹介したのはほんの一部の細胞にすぎず、私たちの体にはもっと数多くの種類の細胞が存在しており、その細胞がそれぞれ役割を果たすことで私たちは健康に生活することができます。私たちの体は非常に複雑でまさに精密機械のようなものと言えるでしょう。

今回紹介した内容は医学部に入ると組織学という講座で学ぶことができます。組織学って面白そうだなと感じた方はぜひ大学に行ってもっと詳しい内容を学んでみてください。

なお、お勉強の事でお困りごとがありましたら、是非私たち家庭教師にご相談ください!また、家庭教師の仲間も募集中です。ご興味のある方は下記リンクより是非ご検討ください。

この記事を書いたのは

現役医学部生ライター I

家庭教師ファースト登録家庭教師。京都大学医学部医学科在籍。中学受験と大学受験を経験。

著作・制作

家庭教師ファースト/株式会社エムズグラント

『質の高いサービスを、良心的な価格で』をモットーに、全国で20年以上家庭教師を紹介しています。実際に担当する教師による体験指導受付中。教育に関する相談もお気軽に。

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