家庭教師ファースト教育コラム理科・科学の雑学
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ガンダム、マクロス、エヴァンゲリオン(は厳密にはロボではありませんが)など、誰でも一度は巨大ロボット兵器に憧れたことがあると思います。筆者も小さい頃プラモデルを集め、主人公になりきったものです。
これらの作品の中で巨大ロボットは、人間の機能を拡大したものとして描かれています。本来ロボットとは汎用性、柔軟性、知能性を併せ持つ機械の総称であり、人間の形状をしている必要はないのですが、多くの作品に登場するのはヒューマノイド(人間型)です。歩く、走る、つかむなどの動作はもちろんのこと、巨大兵器という位置づけからライフル銃を撃ったり、ロボットどうしで格闘したりなど様々な戦闘もこなします。
近年の技術発展には目を見張るものがあり、人間サイズの二足歩行ロボットの中にはアスリート顔負けの動きをするものも開発されています。このロボットをそのままスケールアップさえすれば、巨大ロボット兵器を実現できるのでしょうか?一緒に見ていきましょう!
なお、お勉強の事でお困りごとがありましたら、是非私たち家庭教師にもご相談ください!また、家庭教師の仲間も募集中です。ご興味のある方は下記リンクより是非ご検討ください。
表1は代表的な巨大ロボットの全高と質量(重さ)を並べたものです。ほとんどのロボットが人間の10倍以上の大きさをしており、頭部の位置は6階建てのビル以上もあります。質量もバラツキはありますが、軽自動車でも0.7 t ~ 1.1 tですから、まさに”鉄の塊”と言えます。
実現可能度『×』
残念ながら、巨大ロボットを建造するのは現在の技術ではまず不可能です。「スケールを拡大すればよいのでは?」と思いがちですが、そう簡単にはいきません。
2乗3乗の法則と呼ばれる法則が障害になるためです。これは相似な形状にある物体を2倍の高さにすると、面積は4倍(2の2乗)、質量は8倍(2の3乗)になる、というものです。この法則によると、人間の10倍の巨大ロボットの場合、質量は1,000倍(10の3乗)にもなってしまいます。ところが足裏の面積は100倍(10の2乗)しかなく、とてもじゃないですがこの重さを支えられません。
兵器としては丸裸で突っ立っている訳にはいかず、防御用の装甲を増設したり、武器弾薬を携行してさらに重さが増すはずです。燃料や推進剤も決して軽視できない項目です。
実現可能度『×』
もし仮に「質量が非常に軽く、かつ構造的に丈夫」という相反する性質の素材があれば、取りあえずは建てられそうですが、これを動かせるかどうかはまったくの別問題です。
まず動力源がネックになります。現在のバッテリーやガソリンエンジンなどの内燃機関では、これだけの巨体を駆動させることはできません。
また、多くのアニメでは人間が実際にロボットに乗り込んで動かす、というものが大半です。この場合たいていコクピットは腹部に位置しています。つまり地上10 mの高さ(3階建ての床)に操縦席があるわけです。
ロボットが歩行するだけでも振動は拡大して伝わり、万一地面に倒れてしまったらひとたまりもありません。パイロットにしてみれば、巨大ロボットの転倒は”ビルの上からの転落”を意味します。もっとも、ガンダムでは磁気力で浮かぶ”リニアシート”なるものが編み出されてはいますが…。
実現可能度『×』
”戦場”と聞くと、戦車や艦船が大砲を撃ち合う光景を想像しがちですが、果たしてそれは21世紀の戦場でしょうか?
現代戦では陸海空ともに遠距離からのミサイル(誘導兵器)の撃ち合いによって行われます。ミサイルは多数の電子機器によって制御されており、現代戦は電子戦であるとも言い切れます。
このため戦車は車高をできる限り低く抑え、標的にならないように設計されています。海戦において大砲を撃ち合うのはせいぜい日露戦争までの話です。現代では動きやすさを重視しているため、艦船の装甲は薄くなり、軽量化がなされています。
空中戦でも、戦闘機どうしが追いかけっこして撃ち合う”ドッグファイト”は非常に希です。また地対空ミサイルの発達により、第2次大戦時のように航空戦力が絶対優位ではなくなっています。
夢を壊してしまうようですが、実際問題として巨大ロボットは”動く的”でしかありません。誘導兵器の発達した現代戦においては、巨大ロボットが殴り合うような戦闘は状況としてはまず起こり得ないのです…。
アニメや映画では、ロボット兵器が”巨大人型”をしていることに意味を持たせている作品もあります。エヴァンゲリオンやメカゴジラは巨大生物と格闘する決戦兵器という設定です。ガンダムでは、新粒子の発見により誘導兵器が無力化された世界、という興味深い設定です。
このような仮想世界では確かに巨大人型ロボットは活用できそうですが、現実世界では登場する理由は特にないと言えます。兵器の進化も小型化の傾向をたどっており、ずうたいだけデカいロボットは”無用の長物”と言わざるを得ません…。
ただ、暴徒鎮圧などの威嚇用には有効と思われます。棍棒を振り回す程度の動きができれば、相手をビビらせるぐらいの効果は期待できます。トランプ大統領の壁建設ではありませんが、国境付近に多数配備すればある程度は役に立つと思われます。
巨大ロボット兵器は、構造物としても兵器としてもちょっと無理がありますが、腕や脚など部分部分で見ればたいへん興味深い考察対象です。次の章からは、ものとして”できた”と仮定して、ロボットアームの制御方法や二足歩行技術など、実際のロボットと比較しながら評価を進めていきたいと思います。
制御(コントロール)とは、機械などを思い通りに動かす方法です。この章ではロボット工学の根幹ともいえる制御工学の導入を扱います。
制御系は”センサ情報の利用の有無”でグループ分けができます。センサ情報を使っていないのがフィードフォワード制御で、使っているのがフィードバック制御です。
冬の暖房を例にとってみましょう(図1)。昔のストーブにはセンサは付いていませんでした(同図a)。一方的に部屋を暖めることはできますが、室温を一定に保つのは非常に困難でした。典型的なフィードフォワード制御のひとつだといえます。昭和のストーブは火加減を勘に頼っていたわけです。
一方で最近の石油ヒータには、センサやマイコン(マイクロコントローラ)が搭載されており、フィードバック制御がなされています(同図b)。好みの温度を設定すれば、マイコンがセンサによって温度を計測して比較し、火の強弱を調節してくれます。
このようにフィードバック制御はフィードフォワード制御に比べて、高い精度での制御が可能です。
ロボットの制御も同様の分類が可能です。まずはフィードフォワード制御の1つ、ティーチングプレイバック(教示再生方式)という手法をご紹介します。
実際の産業用ロボットでは、ラインに流れてきた部品に対して、溶接や塗装、組み立てなど様々な作業をしていきます。このティーチングプレイバックでは、まず人間がロボットに所定の動作をいくつか覚えさせます。この作業をティーチング(教示)といい、作業者が手で直接動かすほか、動作内容をプログラミングするなどの方法があります。そして以後はロボット自身がそれらの動作をつなぎ合わせ、行わせたい作業をプレイバック(再生)できるようになります。
ティーチングプレイバックには、対象物との位置情報のやり取りなど、部分的にはセンサ情報を使ってフィードバック制御を行ってはいますが、本質的にはあらかじめ組まれた動作パターンを再生するだけであり、フィードフォワード制御の1つと見なせます。
なお、洗濯機や自動販売機などのように、純粋に一定の手順を繰り返すだけの制御をシーケンス制御といいます。ロケットの打ち上げで「発射シーケンスに入った。3,2,1…」と流れますが、これと同義です。余談ですが、”シークェンス”と発音すると英語らしく聞こえるそうです。
ティーチングプレイバックは人間の目で見ながら細かい動作の微調整ができるため、シーケンス制御よりも臨機応変な対応ができる点が強みです。しかしながら、予期しない障害物など(外乱)に対応できないという弱点もあります。
こでフィードバック制御の登場です。フィードバック制御には、まずP制御と呼ばれる制御方式がベースにあります。P制御を改善・修正するという目的で、オプションを付け足していったものにPD制御、PI制御、PID制御があります。Pは比例(proportional)、Iは積分(integral)、Dは微分(derivative)という意味があります。
産業用ロボットやホビーロボットなどの関節角度制御は、PID方式の角度制御で十分なのですが、大きなロボットの場合、腕が重すぎたり、肘を振ったときの反動が無視できない場合があります。動特性(ダイナミクス)を考慮した制御プログラムを考慮した制御プログラムを組む必要があります。これを動特性補償といいます。
ここではロボットアニメ全体というよりは、『機動戦士ガンダム』(1979年~)における架空の姿勢制御AMBACシステムについて取り上げます。
ガンダムの世界では主な戦場は宇宙空間です。戦車や戦闘機の代わりに、モビルスーツと総称されるロボット兵器が登場します。
無重力空間で手足を動かした場合、反作用によって思い通りの姿勢を取ることは至難の業です。この厄介な反作用を逆手に取ったのがAMBAC(Active Mass Balance Auto Control)です。直訳すると”積極的な質量バランスによる自動制御”であり、宇宙空間における姿勢制御を手足を振った反動で行う、という考えです。
片方の腕を振った場合、もう片方の腕を振れば反作用をキャンセルできるはずです。逆を言えば、完全に相殺せずに非対称性を上手く使えば反作用を制御し、自由自在に姿勢を変えられる可能性もありますね。
実際のロボットでは手足の反動による姿勢制御はありませんが、フライホイール(はずみ車)を使ったものならば存在します。
ムラタセイサク君とムラタセイコちゃんです(図2)。フライホイールとは”回転する円盤”のことです。コマやヨーヨーのような回転体には倒れにくい性質があります。自転運動を一定に保ち続けようとするジャイロ効果がはたらくためです。このロボットの胸部にはリアクションホイール(フライホイールの一種)が内蔵されており、バランスが崩れたときに回転して反作用を発生し、転倒を防いでいます。
人型ロボットとまではいきませんが、回転体を使った制御は航空宇宙分野でしばしば見られます。ヘリコプターの回転翼、国際宇宙ステーションのコントロール・モーメント・ジャイロなどです。
実現可能度『△』
巨大ロボットが完成したとして、2.で述べたような制御技術を駆使すれば、手や腕を一応は動かすことはできると思われます。詳しく見ていきましょう。
ロボットアームは機械によって人間の腕を再現したものです(図3)。関節に相当する部分をジョイント、それ以外の骨をリンクといいます(同図a)。手や道具に相当する部分をエンドエフェクタと呼び、現実のロボットでは人間の手の形状をしていないこともあります。
筋肉に相当する部分はアクチュエータといいます(同図b)。多くの場合、電気モータを使います。電流とトルク(回転力)は比例関係にあり、電流自体も制御しやすいためです。モータの回転数を落とし、その分大きな力を出せるように減速機をかませることがほとんどです(同図c)。なお大型のロボットでは、力の強い油圧式のアクチュエータを使うこともあります。
なお、モータを使って指示通りに位置や速度などを制御するしくみをサーボ機構といいます。電気モータ、油圧モータに限らす、使われるモータのことをサーボモータと呼びます。
触覚に該当するものはエンコーダです。エンコーダはモータの回転角や回転数を検出する装置です。計測に発光素子の点滅を使う光学式エンコーダが一般的です。
計測した関節角から、エンドエフェクタの現在位置姿勢を計算することを順運動学(じゅんうんどうがく)といいます。この逆にエンドエフェクタの目標位置姿勢から、関節目標角を計算することを逆運動学(ぎゃくうんどうがく)といいます。
順運動学の式は必ず導くことができるのに対し、逆運動学の場合は式が必ずしも定まらないことが知られています。ひとつのエンドエフェクタの位置姿勢に対して、関節の組み合わせが複数存在したり、まったくない場合もあるためです。
これはUFOキャッチャーで例えるとイメージしやすいと思います。”キャッチャーから商品まで”という方向性は一通りですが、途中の経路はいくつも考えられるのです。
独立に運動可能な方向の数のことを自由度といいます。人間の腕は7自由度です。肩関節で3軸回りの回転、ひじ関節で1軸回りの回転、手首関節で3軸回りの合計7自由度の運動が可能です。図3のロボットアームでは6自由度です。
『天空の城ラピュタ』のロボット兵や、ガンダムの『ズゴック』などはミミズや蛇のようなチューブ状の腕をしています。これらを超多自由度ロボットアーム(超多関節ロボットアーム、超冗長ロボットアーム)と呼びます。
自由度が多いほど複雑な動きができるはずですが、その分逆運動学を求めることがさらに難しくなってしまいます。実際には関節が増える分だけ腕の重さもマシマシになり、これを支えるのに余分な関節トルクも必要となってしまいます。また全体が長くなるため、エンドエフェクタで軽い物体しか持つことができず、全体の振動が起こりやすいなどの欠点もあります。
現在の技術でも十分可能であると思われます。
ロボットの腕を、ただ単に”ゆっくりと”動かすだけならば比較的簡単にできます。目標角度を変化させればよく、P制御方式による位置制御を行えば済むためです。
ただ、力加減を必要とする動作にはワンランク上の制御技術が必要です。ロボットアニメでは、巨大な手のひらに人間を乗せて運んだり、ロボット同士で仲間の腕をつかんで抱き起こしたりするシーンがあります。ところがこれらの動作は、そうっと手を伸ばし、柔らかくて脆い物体を掴む動作です。
力加減を間違えると、人間が握りつぶされたり、仲間のロボットの腕がもげてしまうことになりかねません。
これらの動作は、細心の注意を払って操縦したり、モーションを非常に細かく設定すれば、ティーチング・プレイバックや遠隔操作でもおそらく可能ですが、非常に面倒です。
そこで登場するのがコンプライアンス制御です。
コンプライアンス(compliance)とは、機械工学においては”柔らかさ”を意味します。ロボットアームのように関節が複数ある場合、各関節の固さ(ゲイン)は異なります。このため手先の部分に至ると、ある方向には柔らかく、別の方向には固いという状況が生じてしまいます。
コンプライアンス制御では各関節の”固さ”を制御します。人間が腕の筋肉を弛緩させるように、ロボットアームにもしなやかさをもたせ、複雑な作業に対応させたり、破損の危険を避けたりもできます。
コンプライアンス制御は産業用ロボットにも使われています。自動車のフロントガラスをはめ込んだり、部品同士を組みつけたりする組み立て作業があるのですが、これらの作業では力を調節する必要があり、コンプライアンス制御が用いられる場合があります。
実現可能度『○』
ロボットの二足歩行は半世紀以上に渡って研究開発が続けられてきました。その結果ハードウェア、ソフトウェアの両面とも技術的には完成の域に達していると言え、巨大ロボット兵器にも適応でき得ると思われます。
二足歩行や多足歩行のメリットには、どんな地面でも走行可能という点にあります。ただ、脚部を破損したら一巻の終わりですが…。
ロボットの二足歩行はすでに実現されています。2000年のホンダASIMOのデビューから久しいですが、近年では米中のベンチャー企業にて、走ったり、飛び跳ねたり、ダンスを踊ったりもできるロボットも開発されています。これらの人間さながらの動きを見ても、巨大ロボットに足蹴りなどの格闘技をさせることも十分可能であると考えられます。
なお、”足で踏みつぶす”という攻撃は考えものです。地面を這う戦車を踏みつぶそうとした際、万一踏み外してしまうと、反力がすべて自分に跳ね返ってくるためです。脚部に過重負荷がかかり、逆に足が壊れて身動きが取れなくなってしまいます。
ここで二足歩行ロボットの開発史とともに重要な技術を見てみましょう。
二足歩行ロボットが研究され始めたのは1970年頃です。当初は倒立振子モデル(とうりつしんし-)の応用が考えられていました(図4)。倒立振子とは、スライダ(直動機構)上に逆さに置いた振り子の制御モデルのことです。振子が倒れないようにスライダを制御するのですが、これはPID制御を用いて可能でした。
人間の足は4重倒立振子モデルと捉えることもできるので、あらかじめ歩行パターンを計算しておけば、当時の計算機のスペックでも二足歩行は実現可能だと思われていました。このような歩行をパターン歩行と呼びますが、当時のモータや構造材では実用に耐えられず、実際にはそう簡単にはいきませんでした。
1980年頃にはZMP理論に基づく二足歩行が開発されました。ZMP(ゼロモーメントポイント;zero moment point)とは動力学的な重心位置のことです。重力だけでなく、慣性力を加えた合力が路面と交わる点のことです。
図5はZMP(赤い交点)を視覚的に示したものです。左右同じ姿勢ですが、左図ではZMPが足裏面内にあり安定しています。右図は、左方向へ踏み出そうと加速した瞬間を表しています。慣性力は、加速度とは逆向きに生じる”見かけの力”であるため、この図では右向きに発生しています。そのためZMPは足裏から外れ、不安定な状態にあることを示しています。
ZMP理論に基づく二足歩行は早稲田大学の開発したWL-10RDに実装され、1985年に実現されました。今日に至るまで、完成度の高い二足歩行ロボットのほぼ全てが、ZMP理論を用いた軌道生成と制御を用いています。
一方で、人間の歩行の研究が進むにつれ、上半身の作用が重要だということが再認識されてきました。これまでのロボットが転倒する原因は、「足首が重すぎた」ためだと分かったのです。片足を上げるだけで重心位置が激しく変化してしまい、軸足が少しでも滑るとあっという間に転んでしまったわけです。上半身の動作で常に動的バランスを補償する必要があると判明したのです。
現在は歩行制御の研究は一応は一区切りついており、二足歩行ロボットの研究の中心は、より人間らしいヒューマノイドとしての統合システムの研究へ移行しつつあります。
実現可能度『○』
他の乗り物でのノウハウや、近年のインタフェースの充実さなどから、巨大ロボットの操縦自体は十分可能だと思われます。
自由度は必ずしも機構的な関節の数や、モータなどの動力源の数と等しいとは限りません。実際に持っている自由度よりも、自ら駆動できる自由度の方が少ないものを劣駆動システムといいます。人型ロボットは移動ロボットの一種であるため、劣駆動システムに含まれます。ロボットを動かすためには、人間の動作を劣駆動システムに落とし込む必要があります。
ロボットを思うように動かすためには、人間と機械を適切につなぐ装置が必要です。人間と機器との入出力装置をヒューマンインタフェースといいます。
ロボットを操縦するには、オペレータ(操縦者)は単に機体を移動させるだけでなく、ロボットアームやカメラなどたくさんの機器を同時に操作しなければなりません。兵器として戦闘ともなれば、さらに索敵、射撃、回避、機体損傷の把握など、もうパンクしそうなスーパーマルチタスクのはずです。 このため、ロボットのヒューマンインタフェースには直感的でわかりやすい操作が求められます。操縦装置としてはスイッチボックス、ダイヤル、ジョイスティック(JS)、コントロールパッドなどがあり、これらはゲーム機でお馴染みです。ロボットの操作にも同じ原理のものが使われています。
操縦桿などを介さずに、自分の動作をそのまま真似てくれるロボットがいたら楽ですね。『機動武闘伝Gガンダム』や『パシフィック・リム』では、パイロットの動きをそのままロボットに投影しています。このような制御方式をマスタ・スレーブシステムといいます。
マスタ・スレーブシステムとは、操縦者自身の運動を計測し、その動きをトレースして実際のロボットを動かすという操縦システムです。マスタ(master)とスレーブ(slave)の元々の意味は”主人と奴隷”です。ロボットやITの分野では、マスタは”操縦者”、スレーブはその命令に従う”ロボット”を指します。
マスタ・スレーブシステムはロボット支援手術などで実際に使われており、宇宙空間や原子力設備などでも活用されています。このとき対象を立体視する必要があるため、オペレータは3D映画のような特殊なメガネや、ヘッド・マウント・ディスプレイ(HMD)などをつけて操作します。
なお、SFの設定で「このロボットは世界で(宇宙で?)ひとりだけしか操縦できない」という、かなりの制約を付けたものがあります。エヴァンゲリオンのチルドレンなどです。兵器には多額の製造費に見合った運用が見込まれており、汎用性も問われます。ごく限られた人間しか操縦できない、というのは兵器として少々問題があります。
実現度判定『×』
戦闘機が変形するマクロスのバルキリー、新幹線が変形するシンカリオン、ハリウッドで映画化もされたトランスフォーマー…ロボットの変形・合体は子ども心をくすぐるものです。想像力も掻き立てます。このような巨大ロボットの変形・合体は実現可能なのでしょうか?
作品中において、変形・合体の目的には次のようなものが挙げられます。
残念ながら、現在の技術では変形機構をもつことにはデメリットの方が大きく、現実的ではありません。変形機構自体の複雑さや重さが問題となるためです。
建設現場のクレーン車やブルドーザを見てわかる通り、変形機構を作動させるためには多くのモータやシリンダを必要とします。ロボット兵器にしてみれば、変形・合体の際だけしか使わないものをわざわざ組み込むというのはムダともいえます。
実際の兵器にも変形機構が仇になってしまった例が少なからずあります。トム・クルーズ主演『トップガン』の戦闘機F-14トムキャットは、飛行中に主翼を動かせる可変翼機の代表格です。ロボットに変形!とまではいかないまでも、飛行速度に応じて主翼の後退角を変え、最適な性能を引き出すようにつくられていました。
可変翼機は主翼の根元にある回転軸で主翼の角度を変化させています。この回転軸は主翼の荷重も支えなければならないため、重く頑丈に作られています。このためF-14はメンテナンスまで含めて非常に高価な戦闘機になってしまいました。
似た事例に垂直離着陸機V-22オスプレイがあり、変形機構の安全性が問題視されています。また、可変翼機は形状的にもステルス性が損なわれるという弱点があり、その後も主流になることはありませんでした。 高速移動が目的ならば、主機とは別の支援機に載せる方が無難です。ガンダムのドダイなどです。また擬態とまではいかなくとも、コンテナなどに隠して運べば、ギリシア神話の”トロイの木馬”のような作戦は十分可能です。ロボットの変形合体シーンは夢のまた夢だと言わざるを得ません…。
巨大人型は無理そうですが、”普通サイズ”の変形合体ロボットは研究開発されています。モジュールロボットというロボットです(図6)。
1個1個がモジュールロボットなのですが、レゴブロックのように多数合体して様々な形態になる、というコンセプトのもので、次のような特徴をもちます。
周囲の環境に応じて変形できるということから未知の環境での作業が見込まれ、災害現場や惑星探査などでの活用が期待されています。現在はホストコンピュータによる集中制御ですが、今後は各モジュールが自律的に動作を決定できる自己組立や、故障したモジュールだけを切り離す自己修復の研究開発が進められています。
巨大ロボット兵器は、残念ながら現在の技術では実現不可能だと言わざるを得ません。ただパーツや機能を部分的に見れば、現実のロボットと技術的な共通点も多いことに気がつきます。手や腕、足の制御には産業用ロボットや二足歩行ロボットの技術が適用できそうですし、インタフェースにはそのまま移植できそうなものもあります。
なお、SF作品が夢を与え、間接的にも貢献していることを忘れてはなりません。到底不可能だと言われていたワープロ変換は『8マン』(1963放送)に触発された技術です。宇宙飛行士の山崎直子さんは『宇宙戦艦ヤマト』(1974放送)に憧れ、宇宙に飛び立ったといいます。「そんなのできっこない!」と言ってしまえばそれまでですが、世代を超えて愛される作品には確かに人を動かす原動力があります。
この記事を読んでくれた皆さんの中に、ロボットを殺戮のための兵器としてではなく、人類の進歩と調和のために開発してくれる人が現れることを願っています。
なお、お勉強の事でお困りごとがありましたら、是非私たち家庭教師にもご相談ください!また、家庭教師の仲間も募集中です。ご興味のある方は下記リンクより是非ご検討ください。
参考文献
・金岡克弥、あのスーパーロボットはどう動く―スパロボで学ぶロボット制御工学― 日刊工業新聞社(2010)
・新井健生、ロボット、株式会社ナツメ社(2005)
・新星出版社編集部、徹底図解ロボットのしくみ、株式会社新星出版社(2009)
現役家庭教師ライターH
家庭教師ファーストの登録家庭教師。秋田大学理工学部卒。家庭教師のほか、大手予備校非常勤講師や専門学校講師を勤めてきました。