家庭教師ファースト教育コラム発達障がいについて
家庭教師ファースト教育コラム発達障がいについて
家庭教師ファースト教育コラム発達障がいについて
近年、発達障害のお悩みを持つ生徒さんを受け持つことが多くなりました。
発達障害の子どもが障害を乗り越えて成功するためには、周りの理解と適切なサポートが必要です。
そこで今回は、発達障害とは何か、それぞれの障害の特性、見極めるサイン、接し方のポイントについてお伝えしたいと思います。
発達障害とは、生まれつきみられる脳の働き方の違いにより、幼い頃から行動面や精神面に特徴がある状態のことを言います。そのため、親や周りの人が育児で悩みを抱えたり、子ども自身が生きづらく感じたりすることがあります。障害の困難さも目立ちますが、優れた能力が発揮されている場合もあり、周りから見てアンバランスな様子が理解されにくい障害です。
発達障害があっても、障害の特性に合わせて家庭や学校での過ごし方を工夫してあげることで、持っている力を伸ばせたり、困難に感じることを減らせたりします。
発達障害には様々な種類がありますが、大きく3つに分けることができます。ADHD・学習障害・自閉症スペクトラム障害の3つです。それぞれの特徴については後述します。
文部科学省の調査(平成24年)によると、「通常学級」で発達障害の可能性がある生徒は全体の6.5%。これは40人学級で約2~3人いるという計算になります。特別支援学級・学校を含めると、全体の10%ほどいるとも言われています。
また同じく文部科学省の調査で、発達障害等のある子どもの「通級(※1)」利用が年々増加しており、平成29年には過去最多の10万人を超えたという調査もあります。発達障害への認知の高まりから、特性に応じた支援へのニーズが増大しています。
グレーゾーンとは、発達障害の特徴がいくつか見受けられるものの、診断基準のすべてを満たしていないため、「発達障害である」という確定診断を下すことができない状態を指す通称です。通称ですので、「グレーゾーン」というのは正式な診断名ではありません。
正式な診断がないために、症状や特性から困りごとが起こっても、周りの人から「努力不足」「不真面目」などと誤解されてしまい、理解や支援が得られにくい等、グレーゾーンならではの悩みもあります。
ADHDは、注意欠如・多動性障害とも呼ばれ、3つの特性があります。
集中力が低く、忘れっぽい「不注意性」、落ち着きがなく、じっとしていられない「多動性」、自分の感情や行動のコントロールが難しく動いてしまう「衝動性」の3つです。
年齢や発達に不釣り合いなこれらの行動が社会的な活動や学習に支障をきたすこともある障害が、ADHDです。以前は「注意欠陥・多動性障害」という診断名でしたが、2013年に刊行された「DSM-5」で、「注意欠如・多動症/注意欠如・多動性障害」に変更されました。
ADHDのある人は、3つの特性を併せ持っているといわれますが、その症状の現れ方は一人ひとり異なります。
症状の現れ方に応じて、ADHDの診断では3つのタイプに分けられます。
不注意優勢型は、「不注意性」の特徴が強く、「多動性」「衝動性」の特徴があまり強く現れていないタイプです。
学校生活でいうと、ずっと授業に集中していることが難しい、忘れ物が多い、などの行動の特徴がみられます。一方で、自分の好きなことに取り組む際の集中力は高い傾向にあります。話しかけても気づかないほどの集中力を発揮することもあり、無視されたなどの誤解を生みやすいです。
多動・衝動性優勢型は、「多動性」「衝動性」の特徴が強く、「不注意性」の特徴があまり強く現れていないタイプです。
行動や感情、欲求のコントロールが苦手なタイプで、動いていないと気持ちが落ち着かない、無意識に動いてしまうなどの特性があります。学校生活でいうと、授業中に立ち歩く、指名されていないのに答えてしまう、などの行動の特徴がみられます。
混合型は、不注意優勢型と多動・衝動性優勢型の特徴をどちらも持ち合わせているタイプです。
・指示を忘れてしまう。忘れ物や紛失が多い。気が散りやすい(不注意)
・突発的な行動が多い、順番が待てない、相手の話が終わる前に話し出してしまう(衝動性)
・落ち着きがなく、ジッとしていることができない(多動性)
※一例です。必ずしもすべての方に該当するとは限りません。
ADHDを持っている場合、幼少期から、「落ち着きがない」「かんしゃくが強い」「活発に動きまわる」などの特徴がみられますが、ADHDではない子どもとの違いはかなり分かりにくいです。
そのため、就学後に「授業に集中できない」「忘れ物が多い」「時間の管理が苦手」などの特徴が現れて、ADHDが疑われることが多いです。また、生活面では「片付けができない」「ゴミをため込んでしまう」「作業途中のものが多くある」などの特徴がみられます。
ADHDは障害の特性上、幼いうちは発達障害であることに気づかず、中学生や高校生・大人になってからADHDだと診断されるケースも増えています。
ですので、中学生や高校生になってからでも、周りの子と比べて上記の特徴が多い場合は、ADHDを疑ってみることも必要です。
ADHDの子どもは、障害の持つ特性が原因で怒られる機会が多いです。
そういった体験は、子どもが自分への自信を失うことことにつながり、ひどい場合には心の病や行動の問題などの二次的な障害を引き起こすことがあります。そのため、ADHDの子どもと接する時には、言動に注意しなければなりません。
ADHDの子どもと接する時のポイントをいくつかご紹介します。
ADHDの子どもと接する上では、できることに注目して肯定してあげることが大切です。ADHDの子どもと接すると、どうしてもできないことに目が行きがちです。
ですが、できないことを指摘されてばかりでは、子どもは自信を失ってしまいますよね。なので、できることに注目して肯定してあげましょう。そうすれば、子どもは、「できた」という成功体験から自信がつき、他のことに取り組む原動力にもつながります。
動ける時間とじっとしている時間のメリハリをつけることも、ADHDを持つ子どもに接するうえで大切です。
じっとしていなければならない場面で無理やり多動性を抑えようとすることは、ADHDの子どもにとって、大きなストレスになります。なので、課題ごとに小休止を挟む、体を動かす役割を与えるなど、動ける時間とそうでない時間のメリハリをつけてあげましょう。そうすることで、ADHDの子どもはストレスを感じにくくなり、集中力も保ちやすくなります。
席にちゃんと座ることができない、暴れてしまうなどの衝動的、突発的な行動を起こしてしまう場合はまず、落ち着かせることを優先しましょう。
パニックになっている、危険な行動のときは体を押さえることが必要な場合もあります。大きな声で「落ち着きなさい!」などは逆効果です。静かな声で「気持ちが落ち着いたら手を離すね」などの声がけをすると良いでしょう。
落ち着いたところで、何が起こったのか、何をしたのか、冷静に整理をして、次に同じことが起きないようにするにはどうすればいいかを一緒に考えましょう。
LDは学習障害のことで、全般的な知的発達には問題がないのに、「聞く」「話す」「読む」「書く」「計算・推論する」能力のうち、1つまたは複数の能力の習得が難しい状態のことを言います。
学習障害はその症状の特徴から、読字障害(ディスレクシア)、書字障害(ディスグラフィア)、算数障害(ディスカリキュリア)の3つのタイプに分けられます。
一口に学習障害といっても、その症状は様々で、大きく3つのタイプに分けることができます。
読字障害(ディスレクシア)とは、字を読むことに困難がある障害のことです。
ひらがなの音読が遅い、読み間違える、読んでいる文章の意味を理解することが難しい、文章のあらすじをまとめることができない、などの行動の特徴が見られます。
・文章を読むのにとても時間がかかる。
・きちんと説明をしたのに、理解してくれない(少し時間が経つと忘れてしまう)
・音読の速度が遅い。一文字ずつ区切って読む逐次読みをする。
・文字や行の読み飛ばしや、語尾や文末を読み間違えることが多い
・「ろ」や「る」など形の似ている文字を見分けることが難しい
※一例です。必ずしもすべての方に該当するとは限りません。
書字障害(ディスグラフィア)は、字を書くことに困難がある障害のことです。
バランスのとれた文字を書くことが難しい、板書など書き写しの速度が極端に遅い、考えた内容を書いて表現することが難しい、などの行動の特徴がみられます。
・板書など写し書きが苦手。
・マス目からはみ出して書いてしまう。
・独特の筆順で書いたり、鏡文字を書く。
・当て字など、間違えた字を書く。
・特殊音節(拗音、撥音など)の表記を間違う。
※一例です。必ずしもすべての方に該当するとは限りません。
算数障害(ディスカリキュリア)は、算数・計算、その場にないものを推論することが難しい障害のことです。
数の概念を理解することが難しい、規則性などの習得が難しい、計算を習得することが難しい、文章題を解くのが難しい、などの行動の特徴がみられます。
・簡単な計算や暗算が難しく、時間がかかる
・筆算すると位取りがずれる
・図形を描くことが難しい
・三角定規などの用具がうまく使えない
※一例です。必ずしもすべての方に該当するとは限りません。
代表的な読字障害(ディスレクシア)、書字障害(ディスグラフィア)、算数障害(ディスカリキュリア)以外にも、「聞く」「話す」が苦手な子もいます。
・聞くべき音(声)に集中できない。
・聞いた内容の理解が難しかったり、聞いた内容を覚えていられない。
・思いつくままに話す、筋道を立てて話しにくい。
・言葉に詰まってしまう。
・適切な速さで話すことができない。
・話す内容や表現が乏しくなってしまう。
※一例です。必ずしもすべての方に該当するとは限りません。
学習障害は、知的な発達に遅れがなく、読み書きや計算など、特定の分野の習得だけが上手くいかない状態であるため、気づきにくいといわれます。
特に、本格的な学習に入る小学生になるまでは、がんばればできる、勉強不足と見過ごされることが多いです。
小学生になって本格的な学習が始まり、「読むのが遅い」「文章の内容が理解できていない」「誤字、脱字が多い」「計算が遅い」などの特徴が著しい場合には、学習障害を疑ってみてください。
目安としては、学校での学習到達度に遅れが1~2学年ほどある場合です。また、就学前でも、「言葉の遅れ」「数えるのが苦手」「手先が不器用」などの傾向がみられることもあります。
学習障害のある子どもは特定の分野で困難を伴うため、そのことを理解し、適切にサポートしてあげることが必要です。
学習障害のある子どもとの接し方におけるポイントをいくつかご紹介します。
学習障害の特性として、文字や文章を読むことが苦手なことが挙げられます。
ひらがな1文字の読みの定着から始めて、単語や語句のまとまりや文章を徐々に読めるようにしていくことが必要です。そのためには、語彙力が欠かせません。
ですので、読み聞かせをしてその意味を教えてあげたり、例文を作らせたりすることで語彙力を高めてあげましょう。コンピューターの読み上げ機能を活用することも有効です。
学習障害の特性として、書くことが苦手なことが挙げられます。
ひらがなのなぞり書きから練習をはじめ、習熟度に応じて、模写や聴いたことを書く聴写へとレベルアップさせていきましょう。
漢字を書くことが苦手な場合は、書き順や漢字のへんやつくりに着目を促す方法や、語呂合わせのような句を作って唱えながら書く方法などを取るのもいいでしょう。
どうしても書くことが難しい場合には、コンピューターやタブレットを用いた文章作成を代替手段として用いるのも有効です。
算数障害がある場合、数の概念を理解することが難しいという特性があります。
なので、いきなり計算問題を解くのではなく、「家族とお菓子を分ける」「どっちのお皿に入ったお菓子が多いか聞く」「レシートとおつりが合っているか確かめる」など、日常の生活や興味のある事に結び付けて考えさせてあげましょう。それが数字を理解するための第一歩となります。
また、問題を解かせる場合は、少ない問題をゆっくり丁寧に解かせる方がいいでしょう。わからない問題があった場合には、答えを教えるだけでなく、解き方までフォローをしてあげることも大切です。
聞いただけ、見ただけの情報では記憶しておくことが難しい子もいます。そんな子には、 聞いた内容を記憶したり理解したりするために、内容を整理する環境を整えてあげると良いでしょう。
また、何かを伝えるときに顔を見たり、肩に手をおいたりして、子供の注意を引きつける工夫をしてみましょう。言葉以外に絵、カードなど視覚面からの情報をプラスすることで、「意識をきちんと向けられる環境」を作ると良いです。
自閉症スペクトラム障害はASDのことで現在の国際的診断基準の診断カテゴリーである広汎性発達障害(PDD)とほぼ同じ群を指しており、自閉症、アスペルガー症候群、そのほかの広汎性発達障害が含まれます。ASDは英名のAutism Spectrum Disorderの頭文字を取ったものです。
症状の強さに従っていくつかの診断名に分類されますが、本質的には同じ1つの障害単位だと考えられています(スペクトラムとは「連続体」の意味です)。
自閉症スペクトラム障害の子どもの特性の1つとして、対人関係・コミュニケーションが苦手であることが挙げられます。
相手の気持ちや状況といったあいまいなことを理解することが難しく、理屈に基づいた行動をとる傾向にあり、臨機応変さが必要な対人関係を築くことが難しいのです。
自分の興味や感情を共有することが少ない、オウム返しをする、自分の関心のある話をし続ける、同世代より大人との会話を好む、皮肉がわからない、などの行動の特徴が見られます。
・自分の興味や感情を共有することが少ない。もしくは自分の関心のある話をし続ける。
・皮肉がわからない。
・限定された興味だけに熱中したり、特定のものに強い関心や不安を持つ。
・自分なりの独特な日課や手順があり、変更や変化を嫌がる。
・感覚(聴覚・視覚・味覚・触覚など)が過敏もしくは鈍感であったりする。
・目的に沿った計画や、必要に応じた修正が難しい。
※一例です。必ずしもすべての方に該当するとは限りません。
自閉症スペクトラム障害は、幼いころから障害を疑わせるサインが出ることが多いため、比較的気づきやすい発達障害です。1歳~2歳児ごろでいうと、「目が合わない」「他の子に関心がない」「言葉が遅い」などのサインがあります。
成長に伴い、「一人遊びが多い」「名前を呼んでも振り向かない」「表情が乏しい」「かんしゃくが強い」などの特性も見られるようになってきます。また、「大きな音が怖い」「水が苦手」「人混みを嫌う」などの傾向がみられることもあります。
自閉症スペクトラム障害を持つ子どもは、コミュニケーションをとることが苦手なため、周りが注意して行動する必要があります。
自閉症スペクトラム障害を持つ子どもへの接し方のポイントをいくつか紹介します。
自閉症スペクトラム障害を持つ子どもは、「ちゃんと」や「きちんと」などの曖昧な表現の言葉を使うと、混乱しやすくなります。ですので、簡単な言葉を使い、短い文章で具体的に伝えてあげるよう意識してください。
また、繰り返し同じ内容を伝えるときは、言い方を統一することも大切です。加えて、肩を叩く、目を合わせてから話すなど、注意を引く工夫をしてから話すことで、伝えたいことがより伝わりやすくなります。
自閉症スペクトラム障害を持つ子どもは、音声で伝えられるよりも、文字や絵、写真、イラストなどを使って伝えるほうが理解しやすい傾向にあります。
そのため、手順や1日のスケジュールを明確にしてイラストなどで説明してあげたり、空間を目的に合わせて仕切って何をする場所かわかりやすくしてあげたりすることで、行動しやすくなるといわれています。
自閉症スペクトラム障害を持つ子どもは、興味が限定的であることが多いです。ですので、興味の幅を広げられるように周りがサポートしてあげる必要があります。
興味のあることをしているときに、無理に他のことをさせる必要はありません。
一通り終わってから、ほかのこともするように促したり、誘ったりするのがいいでしょう。
自閉症スペクトラム障害を持つ子どもは、感覚が過敏であることが多く、苦手な音が聞こえる場所や見えるものがたくさんある場所では絶えず刺激を受けてしまいます。
静かなスペースを用意する、壁や机の上を整理整頓する、物が置かれている場所にはカーテンをつける、などすると、気が散りにくくなり、落ち着いて過ごすことができます。
発達障害が疑われるサインが見られた場合、できるだけ早く専門機関に相談することが大切です。
発達障害の診断は、医師しか行えません。
ですので、医療機関を受診する必要があります。診断基準はDSM-5やICD-10などが一般的に用いられます。経過観察のため、すぐに診断されない場合もあります。
ですが、いきなり医療機関に行くことに抵抗がある場合は、医療機関以外の専門機関でまずは相談をしてみるという方法があります。地域の子育て支援センター・家庭児童相談室・児童相談所・保健センター・発達障害者支援センター・療育センターなどで子育て相談や療育相談など相談支援を行っています。
心理検査やアセスメントを受けることで、特性や困りごとが判明し、公的なサポートを受けられる場合もありますよ!
また、地域によっては、医療機関リストを作成し、対応が可能な発達障害や、アセスメントや個別心理面談、言語療法・作業療法をおこなっているなどの情報をまとめてくれている場合があります。
そういったリストを活用して、子どもの特性に合いそうな医療機関を探してあげましょう。
今回は、発発達障害とは何か、それぞれの障害の特性、見極めるサイン、接し方のポイントについて書いてきました。発達障害を持つ子どもは、その子自身が生きづらさを感じており、周りの理解がなくてはそれを解決することができません。
特に、学習面においては配慮が必要で、それぞれの子どもに合わせたサポートが必要です。
家庭教師ファーストには、発達障害の支援に特化した家庭教師を派遣する「発達障害サポートコース」があります。
発達障害のお子さんの学習面に不安のある方は、ぜひ利用してみてください。
M先生(家庭教師)
家庭教師ファーストの現役家庭教師。慶應義塾大学出身。小学生~高校生まで幅広く担当可能。