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家庭教師ファースト教育コラム発達障がいについて

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【発達障がい】アスペルガー症候群で勉強が苦手なお子さんへの支援方法

  • 発達障がいについて
  • 家庭教師ライターH.K

昨今、「発達障がい」という言葉を耳にしたり、目にしたりする機会が多くなってきていますが、発達障がいについて正しい内容を正確に捉えていたり、対応方法を明確に理解していたりする方が同じ数だけいるかというと、そうではないような社会の動きを感じます。

言葉だけが先行して内容や理解が追いつかないことはよくありますが、発達障がいも世間一般的な認識から見ると、近年このような状態になっていると推測します。つまり、言葉だけの一人歩きということになり、障がいについての理解が具体的に成されていなかったり、曖昧な情報を基に支援や介入が行われていたりするということです。

特に、アスペルガー症候群の場合、発達障がいの中でも比較的軽度な方に分類されるため、きちんとした診断を受けずに「私アスペルガーかも?」と思われている方や、反対に周囲には気付かれずに長い期間過ごしてしまっているケースもあり、支援以前の部分に問題が見られる障がいでもあります。

本記事では、このような状況を鑑み、発達障がいの中でもアスペルガー症候群にフォーカスし、アスペルガー症候群について明確にした後、アスペルガー特有の症状を持つお子さんが学習出来るようになる方法について具体的な支援方法を挙げながらご紹介していきます。

アスペルガーの方と日常生活を共にしていると、症状について知識が無ければ理解に時間が掛かる場面もあるかと思いますので、知識の面に目を通して頂き、取り組むことが出来そうな支援方法をお試し頂けたらと思います。尚、私たちが風邪や病気に罹患した際に出現する症状に個人差があるように、発達障がいも症状の出現には個人差があるため、その点はご理解頂き目を通して頂けますと幸いです。

なお、お勉強の事でお困りの際は是非私たち家庭教師にもご相談ください!

そもそもアスペルガー症候群って何?

そもそもアスペルガー症候群って何?

はじめに、冒頭部分からアスペルガー症候群という言葉を用いていますが、アスペルガー症候群という言葉を聞いて思い浮かぶこと、周囲の方に説明出来ることはどのくらいあるでしょうか?

本記事をお読みいただいている方は、お子さんがアスペルガー症候群である保護者の方、担当の中にアスペルガー症候群のお子さんがいる教育機関関係者の方や発達障がいのお子さんの療育に携わっている方が多いと考えられるため、アスペルガー症候群の方と関わりが無い方と比較すると、お答え頂ける内容が多いと推測します。

ここで重要なことは、思い浮かぶこと、周囲の方に説明出来ることがアスペルガー症候群についての正しい内容であるかということです。冒頭部分でも述べたように、言葉だけが一人歩きしている部分も否定出来ないため、自分が持っている知識が正しいものであるか否かを今一度確認して頂けたらと思います。

なぜここまでこだわるのかというと、正しい内容に基づいて支援を行う方がお子さんの成長や発達をより促進出来るためです。発達障がいに対しては、出来る限り早い時期から適切な支援を受けることで、その後の発達をより良くすることが出来ると言われているため、正しい内容に基づいて関わっていくことを大切にしてください。

アスペルガー症候群の現在

本題ですが、アスペルガー症候群は、結論から言うと発達障がいの中で占める割合が徐々に減ってきている障害で、アスペルガー症候群という名称自体が無くなろうとしています。つまり、何年、何十年か後には「アスペルガー症候群」という名称が無くなるということです。

アスペルガー症候群は、元々発達障がいの中で、あるカテゴリーに属するひとつの障がいとして分類されていましたが、診断に用いられている基準の改訂によりそのカテゴリーに属していた障がいをひとまとまりとして考えることとなりました。つまり、改定後の基準を用いて診断を受けた方は、アスペルガー症候群という名称の診断名にはなっていないということです。

ここで、発達障がいの診断について簡単にみていきます。発達障がいの診断については、WHO(世界保健機関)が作成している「ICD11」(国際疾病分類)というものと、APA(アメリカ精神医学会)が作成している「DSM-5」というものが世界的に用いられています。

どちらも診断の場面において頻繁に活用されていますが、「ICD11」は発達障がいに限らず身体的な疾病も含んでいることに対して、「DSM-5」は作成元が精神医学会であるように、精神疾患系の内容に特化しているものです。したがって、発達障がいについてよりフォーカスされているのは「DSM-5」ということになります。

この2つの診断基準は、それぞれ異なるタイミングで数年おきに改訂されており、DSMがⅣから5に改訂された際にアスペルガー症候群の位置づけが変化しました。元々アスペルガー症候群は、DSM-Ⅳの中で「広汎性発達障がい」というカテゴリーの中に位置づけが成されていましたが、DSM-5に改訂されたことにより、そのカテゴリーに属していたものが「自閉スペクトラム障がい」にまとめられた形となります。

すなわち、従来の考え方ではアスペルガー症候群の診断基準に該当していたとされる場合であっても、今後新規にアスペルガー症候群と診断される可能性はほとんどなく、軽度の場合は発達障がいとしての診断には至らない(グレーゾーン扱いとする)か、重度の場合には自閉スペクトラム症として扱われることとなります。

もしかすると、発達障がいの方が集う場に行った際にアスペルガー症候群と診断されている方が周りに居ない…という状況が訪れるかもしれませんが、数として少ないというよりも、診断される数が減ってきていることによって起こっていることを理解して頂けたらと思います。

支援方法についてどのように変化するのかということですが、自閉スペクトラム障がいにまとめられた状況を考えると、基本的には自閉スペクトラム症の場合に行う支援と同様の方法を用いることが適切です。

しかし、自閉スペクトラム症との大きな違いは、言語に関する発達や知的な発達に大きな遅れが見られないという点であるため、自閉スペクトラム症に似た特性を理解しながら、知的な発達については、必要な配慮を行いながら定型発達の子どもと同じように支援していくことが大切になります。

アスペルガー症候群についてまとめると、①「アスペルガー症候群」と診断されることは無くなってきている、②①が起こるのは発達障がい診断基準の改訂によりアスペルガー症候群という項目が無くなったから、③アスペルガー症候群は自閉スペクトラム障がいのひとつ、④自閉スペクトラム症と異なるのは知的発達に大きな遅れが見られないことです。

ここまで、アスペルガー症候群に関する知識の部分についてみてきました。知的な発達に大きな遅れが見られないことが特徴ではありますが、特性があるがゆえに学習がスムーズに進んでいかないことがあるため、次章ではそのアスペルガー症候群の特性についてご説明し、実際の支援方法に繋げていきたいと思います。

アスペルガー症候群の特性

アスペルガー症候群の特性

前章において、アスペルガー症候群と自閉スペクトラム症は似ていながら異なるとご説明し、主に異なる部分にフォーカスしましたが、本章でみていくアスペルガー症候群の特性は、自閉スペクトラム症に似た部分にフォーカスすることとなります。

自閉スペクトラム症でよく出現すると言われている特性は4つあり、①他者と円滑にコミュニケーションを取ることが難しい、②限局した興味や関心の高さが見られる(こだわりが強い)、③反復した行動を好む(決まったことをひたすら繰り返して行動する)、④感覚過敏・感覚鈍麻です。

この特性の4つは、アスペルガー症候群にもみられるもので、特性が出現する強さは個人差があります。また、アスペルガー症候群と診断されているからと言って全ての特性が見られるとは限らず、反対に主要な特性ではない特性が出現することもあります。ここからは、特性をひとつずつご説明していきます

①他者と円滑にコミュニケーションを取ることに関する難しさ

1つ目は、他者とのコミュニケーションに関する特性ですが、他者の気持ちを考える、推測するということが難しいため、円滑にコミュニケーションを取ることもアスペルガー症候群の方にとってはハードルが高いことです。

自閉スペクトラム症の場合は、この特性に伴って発語の面で発達の遅れが見られますが、アスペルガー症候群の場合は発語に問題が見られるというよりも、誤った発言やその場に適していない発言をしてしまうことが多く見られます。内向的になってしまうか、外向的になるあまり他者とのコミュニケーションが上手くいかないかという違いです。

人間は、発達の過程で幼少期頃に相手の気持ちを理解したり推測したりする力を身につけると言われていますが、アスペルガー症候群の場合はこの点に遅れが見られ、場面に合わない発言をしてしまったり、他者がどのように思うのかを気にせず発言してしまったりすることがあります。

学習面に対してこの特性がどのような影響を与えるのかということですが、学習形態で見るとグループワークが難しいことが想像出来るかと思います。自分だけでは気付くことが出来ないことに気付いて学びを深めたり、自分の意見を他者に伝える力を身に付けたりすることが出来るため学習において有効な方法ではありますが、アスペルガー症候群の場合はこの学習方法が苦しく感じてしまうことがあります。

したがって、もしグループワークを学習に取り入れるならば、そのグループには大人が入るように調整し、グループワークの進行を見守ったり、アスペルガー症候群のお子さんに付いて理解を促す援助をしたりする必要があることを念頭に置いておくことが重要です。

また、国語の文章読解問題において登場人物の気持ちを推測することや、道徳的な観点での考察が必要な内容の学習についても取り組む上で難しさが生じます。論説が得意で小説が苦手な場合、この特性が強く現れている可能性があるため、注意して見て頂けたらと思います。

②限局した興味や関心の高さが見られる(こだわりが強い)

②限局した興味や関心の高さが見られる(こだわりが強い)

2つ目は、興味や関心を示すことに偏りがある、行動においても強いこだわりが見られる場合は、この特性が強く出現している可能性が考えられます。学習場面で見られることとしては、決まった文房具しか使わない、特定の教科ばかり勉強する(学習内容に偏りがある)といったことです。

①と比較すると学習の能力的なことに直接的な影響は少ないですが、そもそも学習に取り組もうとしない事態に陥る可能性があり、支援の場面では興味や関心の偏り、こだわりの強さを上手く活かして学習に集中する軌道に乗せることが重要になります。

こだわりを持っている部分に対して否定の言葉を掛けてしまうと、集中するどころか学習に取り組もうという気持ちすらなくす可能性があるため、こだわりの強さを認め、活用しながら支援する方向性で模索して頂けたらと思います。

③反復した行動を好む(決まったことをひたすら繰り返して行動する)

3つ目は、行動のルーティーン化を好むということで、突然の予定の変更に対応する難しさや、臨機応変に行動することの難しさです。予定外のことが起きるとパニックになってしまう場合、この特性が強く出現していると捉えられます。

学習場面においては、授業展開に大きな変化を持たせないことや、宿題の内容を可能な限り統一して取り組む順序も毎日固定することで、この特性に対応することが出来ます。決まったことを繰り返し行うことは得意であるため、同じようなパターンであれば支援の必要はなく、一人でも取り組むことが出来ます。

しかし、何事においても毎日全てを揃えて生活を送ることは難しく、変化が生じたり、予定していないことが起きたりする場合もあります。そのような時は、なるべく事前に変更点を伝えるように努め、いきなり変更や変化に直面することが無いように工夫します。

事前に伝えておくことにより、必ずしもパニックに繋がらないかというと断言は出来ませんが、お子さんの負担も、そしてパニックに対応する周囲の大人の負担も軽減されるため、分かった時点で伝えることは重要になります。

④感覚過敏・感覚鈍麻

最後に、感覚過敏・感覚鈍麻ですが、文字の通り感覚器から受容する刺激に対して過敏になったり鈍麻になったりする特性のことで、アスペルガー症候群の場合は過敏になる傾向にあります。

例えば、触覚刺激に対して過敏である場合は、雨の水滴が肌に当たると痛いと感じたり、洋服のタグやゴムも肌を刺されているように感じたりすることがあると言われています。聴覚刺激に対して過敏である場合は、私たちが日常生活で気にならない音、鳴っていても不自然に感じない音が耳に刺さるような騒音に聞こえている場合があると言われています。

この特性が学習場面に与える影響としては、学習環境の中で鳴っている音が原因で、集中力を阻害している可能性があること、国語や英語のリスニング音が工事現場のような騒音に聞こえているといったことが挙げられます。

なるべく静かな環境で学習出来るような配慮が必要であると共に、環境の整備が難しい場合やリスニングの実施については、別室を用意する対応が有効です。この特性については、支援というよりも個別の配慮をニーズに合わせて行うことが重要となります。

本章では、アスペルガー症候群によくみられる4つの特性を挙げ、それぞれの特性が学習場面に与える影響についてご紹介してきました。次章では、それぞれの特性に基づき、これらの特性を持つお子さんが円滑に学習出来るようになる方法についてみていきたいと思います。

アスペルガー症候群のお子さんに対する学習面での支援方法

アスペルガー症候群のお子さんに対する学習面での支援方法

ここまでは、アスペルガー症候群の概要と特性という基本的な部分をみてきましたが、本章では基本に基づいて実際の学習場面における支援方法についてご紹介していきます。本記事でご紹介する内容は、あくまでも一例に留まるため、お子さんの状況に合わせて応用してみてください。

①状況を自分に置き換えて理解出来る工夫をする

1つ目の特性に対する支援方法ですが、他者の気持ちを推測したり、場の状況を理解したりすることが難しいために、やる気を損ねて学習が出来なくなっている可能性が考えられるため、分からないことを分かるようにする工夫が必要になります。

障がいの有無に関わらず、分からないこと、理解出来ないことが多い状況の中でやる気を持って取り組むことは難しいです。反対に考えると、分からないことが分かるようになることでやる気が出てくるとも言えるため、分からないこと、理解出来ないことに対して支援を行う必要があります。

例えば、小説関係の文章読解問題の場合、文章という文字情報だけで気持ちや場面を推測するのが難しいということであれば、段落や場面ごとに状況をイラストにして表す工夫が出来ます。文字情報だけで理解出来ることが理想ではありますが、それは最終目標として掲げ、そこまでの過程において場面や状況を理解する、登場人物の心情を読み取る練習を行います。

「登場人物は誰かな?」、「今ここはどのような場所がお話の中心になっているかな?」といった声掛けと共に、お子さんの応答を一緒にイラストにしていきます。イラストが上手いか否かがポイントではないため、可能であればお子さんが自分自身でイラストに起こすことが出来ると良いです。

また、登場人物に吹き出しを付けて登場人物の心情を考える練習も取り入れ、それぞれの登場人物をお子さんに置き換えて、自分自身だったらどのように考えるか、どのように行動するかといった考え方をします。

このような取り組みを続け、慣れてきたら最終的には文章の文字情報だけで解くことが出来るようになるとベストです。「気持ちを推測する」、「状況を読み取る」ということが苦手な中で、いつまでも考え続けることはお子さんの負担が大きくやる気の低下に繋がりかねないため、出来ることを積み重ねて学習出来るようになることを目指していきましょう。

②興味や関心が高い物を学習に取り入れる

2つ目の特性に対する支援方法ですが、興味や関心が高いものがあるならば、それを学習に取り入れて高いモチベーションを維持しながら、かつ、楽しく学習出来るようにする方法です。

例えば、あるキャラクターがものすごく好きと言う場合、そのキャラクターの文房具を集めたり、シール帳やスタンプカードを作成して学習するごとに付けていったりするという工夫が挙げられます。

自分の好きなものや興味があるもので学習出来ることは、お子さんが学習に向かいやすくなるだけではなく、モチベーションを高めることにも繋がります。アスペルガー症候群の興味や関心の強さは、周囲が驚くほど強く、長期間継続することでもあるため、一度取り入れると長く活用することが出来ます。

また、ゲームが好きというお子さんも多く、ゲームの内容は算数の勉強に活用することが出来ます。キャラクターのタイプやそのキャラクターが持っている技等、こちらが目を見開いてしまうほど細かく覚えていることもあるため、「好きなキャラクターを2つ挙げて、それぞれのキャラクターが持つ一番強い技で戦った時、どちらの攻撃がどれだけ強くてどちらのキャラクターが勝ちますか?」といったように活用していきます。

これが、ただの数字の羅列では「学習に取り組みたい!」というお子さんの意欲を引き出すことは難しいですが、興味や関心が偏っている、偏っている分強いという特性を活かし、好きなことで学習出来るように工夫すると学習に向かいやすくなります。

そして、その日の課題をクリアした結果としてシールやスタンプを活用する場合、学習の成績に関係無く「課題をすべてクリアしたらひとつは必ず付ける」というルールが重要です。課題の出来栄えが良くないとひとつも貼ったり押したり出来ないルールにしていると、出来栄えばかりを気にしたり、反対に諦めて適当に取り組んでしまったりする恐れがあります。

ここでは、シールやスタンプが報酬になるわけですが、報酬を与えられるタイミングが不定期になってしまうと、お子さんが継続して取り組む姿勢ややる気を損ねることに繋がるため、課題をクリアした時点でひとつは付けるようにし、そこから加算するか否かはお子さんと相談しながらお互いが納得するルールの中で進めて頂けると良いと思います。

③学習の流れをルーティーン化する

③学習の流れをルーティーン化する

3つ目の特性に関する支援ですが、可能な限り学習の流れをルーティーン化する方法が挙げられます。アスペルガー症候群の場合、知的な発達に大きな遅れが見られないことから、通常学級に在籍して授業を受けることもあり、中々授業をルーティーン化することは難しいですが、授業の導入、展開、終わり方に一貫性を持たせるといった形です。

「これから○○の授業が始まる」、「そろそろ○○の授業が終わる」というように見通しを持つことが出来る工夫が大切であり、始め方や終わり方の統一に加えて、なるべく時間通りに進めることも重要なポイントです。

アスペルガー症候群の場合は、数分の時間のズレを不快に感じることがあるため、〇時間目と決められた授業の開始時間と終わりの時間は守るようにして行うことも大切になります。また、「〇分まで考えてみましょう」といったように個人やクラスメイトと考える時間を設ける場合、伝えた時間は守り、延長する場合には「あと少し」ではなく明確に「あと〇分延ばします」と伝えるようにすることもポイントです。

アスペルガー症候群の場合、「あと少し」、「ちょっと待って」といったような明確なことを避ける言葉を用いられることが苦手であり、これらの言葉によってパニック状態になることも無いとは言えません。指示を出すときには、常に明確な内容になっていることを確認してから伝えることを心掛けて頂けたらと思います。

自宅や特別支援学級で個別に学習を進める場合は、学習内容や流れを授業よりもルーティーン化しやすいため、取り組む教科の順番を可能な限り固定して行うと良いです。時には普段取り組む教科の課題は無く、副教科の学習を行うこともあるため、そのような場合は学習を開始する前に変更点をお子さんと確認、共有します。

細かいことに感じるかもしれませんが、反対に言うとこれらのことに注意を払うことでお子さんの出来る学習が増えていくことに繋がるため、少しの工夫を大切にすることを日々心掛けてみてください。

そして、学習時間全てで掛かりっきりになることが難しい場面は当然あるため、お子さんが慣れてきたら、かごや引き出しに番号を振って取り組むべき課題を用意しておく方法があります。

決まったことを繰り返すことは得意であるため、一定期間同じことを繰り返していると自然と出来るようになっていることが多いです。必要な場合は時計を用意し(聴覚の感覚過敏がある場合は秒針の音が鳴らないもの)、自主的に取り組むことが出来る環境を整えていきます。

同じことを繰り返しながら継続して取り組むことが出来るというのは大切な力であり、集中して課題をやり遂げる力は大人になっても求められる機会が多いため、この特性をお子さんの強みに変えて学習への取り組みに活かして頂けると良いと思います。

④学習環境に細心の注意を払う

4つ目の特性に関する支援方法は前章でも少し触れましたが、学習環境が整っていないことで、学習をすると不快になるという気持ちから取り組みに繋がらないことが考えられます。不快になることが分かっていたら、誰でもそのことはしたくないと思うわけで、それはアスペルガー症候群の有無に関わることではありません。

基本的には、先に述べたように触覚と聴覚の過敏さが学習場面では配慮が必要になるため、お子さんが触って不快に感じない文房具や教材を用意したり、周囲の音環境が静かな場所を学習場所に設定したりする工夫が必要です。どの特性にも言えることですが、どのようなことに興味があったり、不快に感じたりしているかは本人にしか分からないため、気持ちを受容して行動に移すことが求められます。

特に、感覚過敏に関しては、「この感覚をそのように感じるのか」とこちらが驚くような感じ方をしていることもありますが、その感覚の受け取り方がお子さんの大切な感覚であるため、お子さんの現状に合わせた環境調整を行っていきます。

音環境については、必要に応じて視聴覚室のような防音空間を設定したり、自宅の場合は窓の隙間を塞いだり、無音の空調設備を用いたりして、可能な限りお子さんが安心して取り組むことが出来る環境にしていくと良いです。

また、アスペルガー症候群の場合は感覚に対して基本的に過敏になる傾向があるため、視覚に関する配慮は触覚や聴覚ほどではありませんが、色の組み合わせや照明の明るさによっては刺激が強すぎると感じる場合があります。

コントラストが強すぎない色の組み合わせの教材を用いたり、照明については明るさの強度や色を変化させたりすることにより、お子さんが不快に感じない環境で学習出来るように工夫して頂けたらと思います。

おわりに

本記事では、「アスペルガー特有の症状を持つお子さんが学習出来るようになる方法」というテーマに基づいて、アスペルガー症候群の概要と特性、特性に応じた支援方法についてご紹介してきました。

概要部分から分かるように、知的な発達に大きな遅れが見られないことから、「勉強は出来るけど、でも出来ないこともあって日常生活でも何となく…」というような曖昧な捉え方をされていることが多く、さらにアスペルガー症候群という診断名が無くなったことから、周囲に気付かれず大人になることも考えられます。

しかし、発達障がいは、早い時期に適切な支援を受けることが重要であるため、アスペルガー症候群のお子さんと関わる場合には、アスペルガー症候群に関する正しい知識を身に付け理解を深めると共に、特性に基づいた支援を行うことが大切です。

また、自閉スペクトラム症と似た発達障がいですが、知的な発達に大きな遅れが見られないことを考慮し、定型発達の子どもと変わらない内容で学習出来る部分はそのまま継続し、配慮が必要な部分を重点的に支援の対象としてお子さんの発達を支えて頂けたらと思います。

アスペルガー症候群と診断されることが今後無くなってくるため、支援方法についても模索しながらとなる部分が出てくるかもしれませんが、本記事がその際に少しでもお役に立ちますと幸いです。

なお、お勉強の事でお困りの際は是非私たち家庭教師にもご相談ください!

この記事を書いたのは

家庭教師ライターH.K

家庭教師ファーストの現役家庭教師。大学及び大学院では児童心理学を専攻。

著作・制作

家庭教師ファースト/株式会社エムズグラント

『質の高いサービスを、良心的な価格で』をモットーに、全国で20年以上家庭教師を紹介しています。実際に担当する教師による体験指導受付中。教育に関する相談もお気軽に。

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