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家庭教師ファースト教育コラム発達障がいについて

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【発達障がい】ADHD(注意欠如/多動症)で勉強が苦手なお子さんへの支援方法

  • 発達障がいについて
  • 家庭教師ライターH.K

語弊を恐れずに言えば、発達障がいの中でも、比較的「分かりやすい」と言われるのは「ADHD」ではないかと思います。しかし、多動が主な特性である場合には、「子どもらしい元気な子」という印象となり、障がいの発見に至るまでに時間が掛かるケースも多いです。

早期発見が出来ることで、学習を始める時期には症状や特性が緩和されることも考えられます。しかし、子どもらしい元気な雰囲気と特性が似通ってしまっている部分もあり、小学校に入学して「授業をじっと座って受けることが出来ない」という主訴から発見されることがあります。

本来であれば、学齢期より前に発見出来ると学習に落ち着いて取り組むことが出来る頻度が高くなっていたかもしれないものが、学習を始めることによって発見されることが多い実態があるため、この溝が埋まるようにADHDに対する知識を持っておくことが大切なことです。

「勉強への対処方法」と考えると、「勉強する時の対応方法」を想像しがちですが、その他にも勉強がしやすくなるようにする方法は色々あり、なるべく早く発見するということもその1つです。このような前段的な内容も含め、本記事ではADHDのお子さんが勉強に取り組みやすくなるような方法を考えていきたいと思います。

なお、お勉強の事でお困りの際は是非私たち家庭教師にもご相談ください!

ADHDとは?

ADHDとは?

記事の冒頭から「ADHD」と記していますが、正式名称は「注意欠如/多動症(Attention Deficit Hyperactivity Disorder)」と言います。発達障がいの診断に多く用いられている「DSM-5」というものからこの名称へと変更になったものです。

発達障がいは、基本的に数年ごとに診断基準や分類が見直されており、「DSM-5」とは何か、最新の名称や分類、特性はどのようになっているのか、専門的な領域まではいかなくてもある程度知っておくと支援を行う際に役立てることが出来ます。本章では、ADHDの概要や基礎的な内容についてご紹介していきます。

発達障がいの診断

はじめに、発達障がいの診断ですが、現在世界ではWHO(世界保健機関)が作成している「ICD10」(国際疾病分類)というものと、APA(アメリカ精神医学会)が作成している「DSM-5」というものが広く用いられています。

どちらも頻繁に活用されてはいますが、「ICD10」は、WHOが出しているということもあり、発達障がいに限らず身体的な疾病も含んでいることに対し、「DSM-5」は作成元が精神医学会であるように精神疾患系の内容に特化しているため、発達障がいについてよりフォーカスされていると捉えることが出来ます。

日本の現場ではどちらも用いられていますが、医療系では「ICD」、心理・発達系では「DSM」といったように何となく使い分けがされているような傾向があります。「この前言われたことと違う名前が出てきた?」となることもあるかもしれませんので、どちらも現場で用いられていることを知っておいて頂けると良いと思います。

また、現在はそれぞれ「10」、「5」が最新のものになりますが、時代の流れに沿って改訂が行われており、「ICD」については近年のうちに「11」が日本語として発表され、内容や分類も新たなものに変更となります。どちらの基準を参照する場合でも、最新のものか否かを確認して活用するようにしてみてください。

ADHDの概要

ADHDの概要

それでは、本題のADHDについてですが、この障がいは、先に述べた「DSM-5」からこの名称へと変更になった障がいです。DSM-Ⅳでは、注意欠陥および破壊的行動障がいというカテゴリーの中に位置づけられており、注意欠如多動障がい(混合型、不注意優勢型、多動性・衝動性優勢型)と、特定不能の注意欠如多動障がいから構成されていました。

これが「DSM-5」では、「注意欠如/多動性障がい」となり、注意欠如/多動障がい(混合発現型、不注意優勢型、多動性・衝動性優勢型)と、他で特定される注意欠如/多動性障がい、及び特定出来ない注意欠如/多動性障がいという構成となりました。

分類に型が設けられているように、この型によって主たる特性が少しずつ変わってきます。基本的な特性は同様ですが、最も強く出現する特性が異なるというイメージを持って頂けると良いと思います。次項から、特性の具体的な内容について見ていきます。

特性①不注意

ADHDにおける基本的な特性は、不注意と多動です。はじめに不注意ですが、子どもによくみられるのは「忘れ物が多い」、「長い時間話を聞くことが出来ない」といったことです。不注意優勢型の場合に強く出現する特性になります。ADHDそのものが、割合として女性より男性に多いですが、どちらかというと不注意は女性に多く見られると言われています。

ただし、想像して頂いて分かるように、不注意というのは子どもの頃にはあまり目立ちません。「忘れ物が多い」ことについては、基本的に子どもの頃子ども自身で持ち物を用意する機会はあまりなく、親御さんと用意したり親御さんに用意してもらったりするため、忘れ物をすることはほとんどありません。

また、「長い時間先生の話を聞くことが出来ない」ことについても、子どもは元々人の話を長く聞くということが難しいため、途中で飽きてきたしまったとしても、それはその子どもだけに見られるのではなく、幼稚園や保育園のクラス全体で見た場合に、同じようになっている子どもが多くいると特には目立ちません。

このようなことがあり、女児のADHDは男児と比べても発見が難しく、特に学齢期前の行動で特性が目立つような出来事が無いため、小学校に通うようになり、授業を受けて初めて「勉強の取り組みにくさ」が明らかになるのです。

本来であれば、学習が始まる時期には障がいについて理解があり、医学的な何らかの対応を既に出来ていることがベストではあります。そのことによって、学習に取り組みやすくなる可能性があるためです。

しかし、発見が遅れたからといって学習面での諦めを感じることは無いため、発見出来た段階から適切な治療を受けるようにすることが大切です。不注意の特性が強く表れている場合における学校生活を送る上での支援や、勉強の支援については後半で詳しく見ていきます。

特性②多動・衝動的な行動

続いての主な特性は多動ですが、多動性・衝動性優勢型の場合に良く出現するものです。これは、不注意とは対照的で男性によく見られると言われています。日常生活の中では、「じっとしていることが難しい」という状態で出現することが多く、幼稚園や保育園の生活でも「先生が話している時に動き回る」、「落ち着きが無い」という状態として確認されることがあります。

この特性についても、年齢が小さいうちは「よく動き回る子」、「子どもらしい元気な子」という印象に留まってしまうことがあり、不注意と同様に早期発見が難しいこともあります。しかし、幼稚園や保育園に通うようになると集団生活が始まり、先生の話をじっと集中して聞くことは難しくても、その場に座って待つことが出来る子どもは多くなります。

そのため、不注意よりも多動の方が周囲には強い印象を与えることになるため、不注意と比較すると多動の方が発見は早くなる可能性があります。ADHDそのものが男児の方が多いことは疫学的に明らかになっていますが、発見されている確率が高いためという理由も一理あるということです。

また、多動を併せてよく見られるのは衝動的な行動です。これは、「他者と会話で折り合いをつけることが難しい」、「思い通りにいかないことがあると手が出てしまう」といった状態で日常生活に出現します。

子どもの頃は皆、感情をコントロールする脳部位が未発達なこともあり、子ども同士の喧嘩では手が出てしまうことは当たり前のように起きますが、発達とともに徐々に落ち着いてきます。ADHDの場合、発達を遂げても中々自分自身の気持ちのコントロールが難しく、特に「他者と折り合いをつける」ことが課題となるケースが多く見受けられます。

衝動的な行動という特性は、勉強を行う上で直接的に関係していることではありませんが、「得意な問題しかスムーズに取り組むことが出来ない」、「答えが分かると挙手ではなくすぐに口にしてしまう」といったような状態で出現します。待つことが出来ずに、つい先に発言してしまう感覚です。

また、衝動的な行動は、周囲に与える影響も大きいため、様々な場面でトラブルとなることが多くあります。トラブルとなること自体が問題なのではなく、周囲の大人が状況を適切に理解していないと、二次障害、つまり「自己肯定感の低下」が起きてしまう可能性が高まるというわけです。

「いつも叱られてばっかり」、「何をしても褒めてもらえない」という気持ちから、「自分なんて…」という気持ちや「何をしてもどうせ無駄なんだ」という気持ちに繋がることも少なくありません。

衝動的な行動というのは、どうしても「問題行動」として捉えられがちですが、そのような行動に発展してしまうことには必ず背景があるため、その背景を考えずに起きた行動だけに目を向けて叱ったり注意したりするのではなく、「この行動に至るまでに何があったのか」、「この行動の背景は何か」ということを考えて対応にあたることが大切です。

本章では、ADHD全般に関する概要と、主な特性について見てきました。次章からは、学校生活を送る上で気を付けると良いポイントや、勉強場面における対応方法について具体的にご紹介していきます。

学校生活を送る上での対応

学校生活を送る上での対応について見ていきますが、本章の内容は、学校場面でも家庭場面でも活かすことが出来る内容にフォーカスしたいと思います。また、「なぜ勉強という本題から少し離れた内容なのか」と疑問に思われる方もいらっしゃるかもしれませんが、勉強が出来るということは、学校での授業に参加することが出来たり、日常生活をなるべく不自由なく送ることが出来たりすることが大切であるためです。

特別な知識が無いと取り組むことが出来ないものではないため、難しく構えずに「どのような方法があるのか」という気軽な気持ちで目を通し、難しいと感じている部分や、困っていることへの参考にして頂けますと幸いです。

不注意優勢に対する学校・家庭での対応

不注意優勢に対する学校・家庭での対応

学校、家庭共に出来る対応としては、持ち物チェックリストを作って一緒に確認を行うことです。不注意優勢のお子さんの場合には、身の回りの管理を自分自身で行うことが難しいため、周囲の大人が支援してあげると過ごしやすくなる部分があります。

例えば、毎日の持ち物リストを家庭で作成し、用意が出来たらチェックやシールを貼る欄を作っておくと、1人でも準備を進めていく練習が出来ます。この時、持ち物が全部用意出来て1つのチェックやシールにするのではなく、持ち物ごとに欄を用意すると良いです。

まとめて1つのチェックとしてしまうと、見落としがあったり、お子さんのやる気を起こしにくくなったりするためであり、最終的には「自分1人で仕度が出来るようになる」という目標を考えると、楽しく取り組むことが出来る方がお子さんも自主的に取り組むようになります。

一つひとつ目に見えて達成感を感じることが出来るような工夫が大切であり、その1つとして持ち物をリスト化することで忘れ物を防ぐ方法です。間接的ではありますが、学習に必要な道具が常に手元にある状態を維持する助けとなるため、学習に集中出来る環境を整えることに繋がっていきます。

学校でも家庭での取り組みを参考にし、宿題をリスト化して提示することをオススメします。連絡帳に書いてもらうだけではなく、その日に取り組むべき宿題を目で見て分かるようにリスト化し、取り組んだらチェックをつけることが出来るようにしておくと、宿題忘れを防ぐことが出来るだけではなく、小さな達成感の積み重ねに繋げていくことが出来ます。

多動優勢に対する学校・家庭での対応

学校生活を送る上で、多動優勢のお子さんに出来る対応としては、主に家庭で出来ることですが、1つの遊びや物事に集中して取り組む時間を作ることです。じっくり取り組むことが出来るのは家庭かもしれませんが、学校の休み時間でも同じように取り組むことは出来ます。

多動傾向が強い場合は、基本的に長い時間じっとしていることが難しいため、学校生活では授業中に離席をすることが多いです。しかし、そのことに対して「何でじっと座っていられないのか」、「授業だから座っていないとダメ」と伝えても、ADHDの場合はそのことがそもそも難しい(出来ないことに近い)ため、落ち着いて過ごすことが出来る時間を少しずつ増やしていく必要があります。

そのための取り組みとして、遊びの中にレゴ(ブロック)や、すごろく(板ゲーム)を取り入れることをオススメします。取り組むというと、課題のように「何かをしなければ」という意識になってしまいますが、遊びの一環とすると子どもも自然に学んでいくことが出来ます。

元々多動傾向にあるということで、集中力が必要な遊びを自ら積極的に取り入れることは考えにくいため、周囲の大人が一緒に遊びに参加すると良いです。あくまでも遊びの一環であるため、無理強いはせず、「少し気持ちが向いているな」という日や、「今日は比較的落ち着いている」という日に誘ってみるようにしてみてください。

衝動優勢に対する学校・家庭での対応

衝動特性が優勢の場合、思い付きのまま行動を起こしてしまいがちな部分があるため、学校、家庭共に一日の行動計画を目に見える形で作成するという対応をオススメします。ADHDに限らず、発達障がい全般に共通して言えることですが、一日の見通しを持たせるということが非常に大切になります。

予定が分からない中での行動や、急な予定変更は、発達障がいの方にとってパニックを引き起こす原因となってしまい、心身ともに負担が大きくなります。そのため、一日の予定を視覚化して確認すること、可能であれば前日にはお子さんの次の日の動きを明確にし、スムーズにスタートが切れるように支援出来ると良いです。

また、学校・家庭で共通しての対応になりますが、衝動特性が強い場合は、頭で思っていることよりも先に行動してしまうことがあり、児童期では特に子ども同士の争いごとに発展する可能性があります。この時、その場にいる大人が気を付けなければいけないことは、「突発的に手を出した」という事実だけで悪いと決めつけないようにすることです。

ADHDのお子さんは、自分の意志で衝動的な行動を起こしているわけではありません。自分自身でもコントロールすることに難しさを感じていることが多いため、そこで周囲の大人まで責めるような対応を取ってしまうと、自尊心や自己肯定感の低下に繋がりかねません。

起こした全ての行動を許すわけではありませんが、まずは起こした行動や、理由がある場合にはそれも併せて受容すること、そして本当はどのように他児と関わるべきであったのか丁寧に伝えることが重要です。他児へのフォローも忘れずに行う必要がありますが、緊急性が高くない場合は、行動の善悪を一旦抜いて受容し、そこから指導に進むことを心掛けて頂けたらと思います。

本章では、学習にスムーズに取り組むことが出来る様、学校生活を送る上での家庭、及び学校での対応方法について特性ごとにいくつか見てきました。「学校」というのは、児童期、及び青年期の子どもにとって重要な社会のコミュニティになるため、そこで過ごしやすくすること、学習に取り組みやすい態勢を整えることも学習支援にとっては間接的に重要なことなのです。

勉強場面における対応方法

本章では、いよいよ勉強場面における対応や支援の方法について、それぞれの特性ごとに見ていきたいと思います。前章で確認した通り、勉強に集中して取り組むためには、日頃の学校生活を円滑に送っていることが大切です。

勉強だけに着眼して支援を行うのではなく、生活の延長に勉強があるという捉え方で、それぞれの個性や特性を尊重した対応を見つけて頂けたらと思います。ここでの内容が、その参考となりましたら幸いです。

不注意優勢に対する対応方法

不注意優勢の場合に多く見られるのは、「ケアレスミス」と呼ばれるミスの多発です。不注意が特性の中でも強いというのは、先に述べた「忘れ物」や「○○し忘れ」等、日常生活においても確認不足によって何かが起きている場合が多く、それは勉強場面においても同様です。

「ケアレスミス」というのは、確認をきちんと行っていれば防ぐことが出来た可能性が高いミスのことを指し、主には簡単な計算ミスが挙げられます。ADHDの場合は、勉強に限らず、自分自身で確認をするということが難しいため、「何かを終えたら確認という行動をする」ことを習慣化出来るように支援することが必要です。

例えば、計算問題を数問解くような場合は、全ての問題が解き終わってから見直しを行って確認しても良いですが、1問ずつ行う方が確認のし忘れは減ることが考えられます。同じ行為を同様の集中力で繰り返すことにも難しさがあるため、流れは決まっていながらも少し変化がある方が確実にこなしていくことが出来ます。そのため、確認はこまめに行うように伝えていくことがオススメです。

また、ケアレスミスは算数(数学)に限ったことではなく、漢字の書き取りや国語の文章読解でも起こり得る可能性はあります。漢字の場合は、書き間違いもありますが、そもそも新規の漢字を学んで記憶する段階で焦ってしまったり、他のことに気が向いてしまっていたりすると正しく記憶することは出来ません。

新しいことを学ぶ時こそ、周囲の大人が一緒に1つずつ丁寧に確認しながら進めていくようにすると良いと思います。また、出力の段階として急いで書いたがために「点の打ち忘れがある」、「線が一本足りない」ということが起こりやすいです。このような場合は、丸付けの際に大人が丁寧に確認すると共に、直しは見守りながらお子さんと一緒に正しい内容の確認を行うことが大切になります。

そして、文章読解の場合では、「文章中から書き抜きなさい」という場面において、そっくり移すことが難しく、漢字ではない部分を漢字にしたり、句読点をとばして記述してしまったりすることがあります。このような場合は、「書き抜く」ということについて説明し、文章の隣に解答用紙を置いて、書写のように一文字ずつ写していく方法がオススメです。

この他、学習環境が騒がしいと色々な刺激に注意が向きやすくなるため、落ち着いた環境設定にすることも非常に重要です。騒がしいと考えると「音」だけのように考えてしまいますが、視覚的な情報についても「刺激」であることに変わりはないため、聴覚的な情報と同様の考え方をします。

したがって、学校の場合には教室の壁面に必要以上に掲示物を掲示しないことが有効であり、家庭においてもなるべく無地の壁側を向いて勉強に取り組む形が良いです。これは学習教材についても同様で、教材は「分かりやすさ」、「親しみやすさ」という観点から、年齢が低いほどイラストが多用されている傾向にありますが、ADHDの場合はこれが逆効果になることがあります。

本来、注意を向けなければいけない対象には注意が向かず、副次的な効果のために載せているイラストにばかり注意が向いて勉強が進んでいかないということです。そのため、教材を選ぶ際には、見やすく整理されていて、かつ、シンプルなものを選ぶとお子さんの目に入る刺激が少なくなるため、本来注意を向けたい部分にきちんと向くということになります。

不注意優勢の場合は、勉強そのものに対する支援と同時に、環境設定への配慮も力を入れるべき部分です。お子さんと同じ目線になり、刺激を必要最低限に保つことが出来るような環境を整えていくようにしましょう。

多動優勢に対する対応方法

多動優勢に対する対応方法

多動優勢の場合ですが、最も重要な対応としては、お子さんのペースに合わせた勉強時間を設定することです。多動傾向が強い場合は、「落ち着いて何かに長時間取り組む」ということが難しいため、勉強そのものが難しいということではなく、勉強を長い時間続けることが難しいという解釈になります。

したがって、はじめは、お子さんが無理なく取り組むことが出来るような時間設定を行うことが大切で、集中力が途切れそうになるかならないかの時間を設定し、その時間内は集中して勉強に取り組むように支援していきます。

方法としては、まず、お子さんの普段の様子からどのくらいの時間勉強に集中出来そうか、おおよその時間の検討をつけて一度その時間で勉強に取り組むように指示してみます。その様子を見て、お子さんとその時の勉強時間が適切であったか否かを話し、その段階でのちょうど良い勉強時間を見つけていきます。

最初の段階では、勉強時間が5分でも10分でも問題ありません。内容も、必ずしも「勉強」という印象が強いものにする必要は無く、好きな本の読書をする時間にしても良いです。はじめから「勉強」という印象を与えてしまうと、発達障がいであるか否かに関わらず、子どもは意欲を持って取り組むことが難しくなります。

遊びの延長から、徐々に勉強らしいスタイルに変え、いずれは自ら勉強出来るようになるという段階をイメージして対応出来るようにしましょう。時間を守って落ち着いて勉強出来るようにするためには、タイマーを用いることをオススメします。

聴覚過敏があって、大きな音や突然鳴る音にパニックになってしまう場合は使用が難しいですが、聴覚過敏が無い場合は、携帯電話のアラームやキッチンタイマーを用い、時間を設定してお子さんの近くに置きます。

発達障がいの場合は、「情報が視覚的に理解出来る」という方が安心して生活することが出来るため、「自分がどのくらい勉強に取り組むのか」、「この時間はいつまで続くのか」ということがタイマーを用いることによって、目で見て理解出来ます。そして、「音が鳴ったら終える」ということも理解がしやすいです。

また、段階が進んでいくと、自分自身でタイマーを設定し、時間が来たら終えるという勉強に取り組むことを自主的に行うことが出来るようになります。勉強に取り組む力だけではなく、自分自身で自立して何かに取り組む力を身に付けることも出来るため、時間が分かる何らかの指標を用いて勉強に取り組むようにしてみてください。

衝動優勢に対する対応方法

衝動性優勢タイプの場合の勉強についてですが、勉強を行う上で特別何か注意するべきことがあるわけではありません。それは、衝動性というのが基本的に勉強の学力そのものの場面で影響が見られることではなく、どちらかというと日常生活を送る過程で影響が見られることであるためです。

衝動性が強い場合は、勉強に取り組みやすい環境を整えることが重要な支援の1つであり、決められた順番にタスクを進めていく形式を取ると良いと思います。「やりたいこと」、「目についたこと」から始めるのではなく、見通しを持って勉強に向かうと、将来的に計画性を持って物事に取り組む力が身に着いていきます。

対応方法としては、課題をすすめる順番にかごに入れて重ねて置いたり、課題を入れるケースを色分けしたりすることで、色の順番にタスクを進めていったり、子どもでも分かりやすく取り組むことが出来るようにする工夫が必要です。

はじめは、周囲の大人が支援していきますが、最終的には自立していくことを目標とするため、支援を行いながらも、直接的な関わりから、環境を整えたり、教材を工夫したりと間接的に支援する関わり方へとシフトチェンジすると、「自分自身の力で取り組む」前向きな気持ちの育ちにも繋がっていきます。

予定の変更が苦手な部分もあるため、毎日大きすぎる変化は付けないように心掛け、取り組むことが出来る適切な分量を定期的に学習していくことが出来ると良いです。そして、勉強道具を片付ける場所も決めておくようにし、片付けを行う部分まで勉強のルーティーンとするようにしてみてください。

おわりに

本記事は、「ADHD特有の症状が原因で勉強できないお子さんへの対処法」というテーマに基づき、ADHDの根本的な理解を深めると共に、日常生活での過ごし方や支援の方法、勉強場面における対応方法についてご紹介してきました。

ADHDに限ったことではありませんが、発達障がいであったとしても「=勉強が出来ない」ということにはならず、周囲の大人の配慮や少しの知識、理解しようとする気持ちでお子さんの勉強を支援することが出来ます。お子さんの特性を的確に理解し、「楽しさ」をお子さんと共に感じながらそれぞれの勉強スタイルを探してみてください。

なお、お勉強の事でお困りの際は、是非私たち家庭教師にもご相談ください!

この記事を書いたのは

家庭教師ライターH.K

家庭教師ファーストの現役家庭教師。大学及び大学院では児童心理学を専攻。

著作・制作

家庭教師ファースト/株式会社エムズグラント

『質の高いサービスを、良心的な価格で』をモットーに、全国で20年以上家庭教師を紹介しています。実際に担当する教師による体験指導受付中。教育に関する相談もお気軽に。

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