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家庭教師ファースト教育コラム大学受験

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【地理編】大学受験「地理」の勉強方法を、現役医大生が徹底解説

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  • 現役医学部生ライター I

共通テストにおける地理の重要性はさほど高くはありません。理系であれば、共通テストのみで、文系であっても多くの人が共通テストのみでしか使いません。地理は社会のうちのひとつだし、暗記したら余裕でしょ、と思い込んでいてはいけません。歴史系の科目と異なり、地理は暗記だけでは太刀打ちできません。今回は、暗記に頼らない地理の勉強方法を説明していきます。

なお、勉強の事で困ったことがあった際には、是非私たち家庭教師にもご相談ください!

【前提】社会科における各科目の特徴と選び方

社会科における各科目の特徴と選び方

社会は、主に地理、日本史、世界史、倫理・政治経済からなります。現代社会は受けられる大学に限りがあるので割愛します。ここでは、それぞれの科目の特徴と適性について簡単に説明していきます。

世界史は暗記量が最大

文系の人は世界史を選択する人が多いようです。暗記量がいちばん多く、しかもカタカナや横文字が多く、暗記に苦労する人が多い世界史。しかし、暗記を進めると、努力量に比例して、点数が上がっていきます。それ相応の時間をかけると、高得点で安定することも可能です。

注意点としては、中学の歴史分野では世界史はあまり触れられていないので、小学校からのなじみのある日本史と比べるととっつきにくいという点があります。しかし、日本史と2科目受験する場合は、ひとくくりに歴史を極めればよいという考え方も出来るので、文系の日本史世界史のセットで受験する人は見られます。理系の場合は、そもそも高校のカリキュラム的に世界史を選択肢に入れることが難しい高校がほとんどだと思います。理系で世界史を選ぶ人は、独学も視野に入れつつ勉強することになるので、できるだけ避けることをおすすめします。

日本史は理系でも選択する価値があるかも

日本史は、文系理系問わず、多くの人が選択します。暗記量が多いですが、世界史に比べると少しだけ暗記量は少なめになります。日本史も世界史と同様、暗記がモノをいう世界なので、努力量に応じて点数が上がっていきます。中学までの社会に比べるとかなり深い内容まで問われるので、苦しい部分はありますが、なじみのある科目ということで選択する人が多いです。

理系の人でも選択する価値はあります。理系は英数理がメインで、社会にそこまで時間をかけてられないから歴史を選ぶのは愚策というのが定説ですが、これはすべての人に当てはまるわけではありません。例えば、共通テストで高得点が必要な医学部受験生や、京都大学総合人間学部(理系)志望の人などは、歴史系を選択する価値があります。前者は、出来るだけ共通テストで高得点を取っておいたほうがいいので、ご理解いただけるかと思います。後者については、知らない人が大多数だと思いますので、少し詳しく説明します。

京都大学総合人間学部(理系)の共通テストの受験科目は、国語、社会1科目、外国語(実質英語)、数学(ⅠA・ⅡB)、理科2科目です。配点は、100点です。配点の内訳は、社会が100点満点で、その他の科目は0点です。驚きましたか?なんと、京都大学総合人間学部の共通テストは実質社会1科目だけで勝負が決まります。残りの科目は、足切りに使用されるにすぎません。恐らく、二次試験で実力を推し量ることが出来るから共通テストでは確認しないということなのでしょう。そのような場合、社会では絶対的な高得点が求められます。そこで、科目の性質上、時間をかければ点数が安定する歴史系がよいというわけです。これは、極端な例ですが、難関大の理系では共通テストで社会を重視する傾向があるので、志望校の配点を見て、社会の配点が高ければ、歴史系を選択する価値は大いにあります。

倫理・政治経済は環境が整っていればアリ

倫理・政治経済は、受験者数が他の科目に比べて圧倒的に少ないです。暗記量は歴史系より少なく、比較的高得点を狙いやすい科目ではあります。しかし、学校で授業を展開していないこともあり、独学を迫られることがしばしばあります。また、独習用の市販の参考書や教材があまり充実しているとは言えないので、勉強するための環境に苦労しやすいです。もし、学校で倫理・政治経済の授業が受けられる環境であるのならば、検討してみる価値は十分にあります。

地理は暗記量は少ないけれど不安定

さて、お待ちかねの地理ですが、地理は、理系から絶大な人気を誇ります。その理由は、暗記量の圧倒的少なさと、完成させるまでに必要な時間の少なさにあります。文系でも、別の1科目は、二次試験でも使うから深く学習するけど、社会の2科目目として地理が選択されることがあります。理系の場合、二次試験の英数理の負担が大きく、社会はできるだけ少ない時間でそこそこ高得点を取りたいというニーズがあり、それと地理の科目の特性がマッチしています。しかし、地理には暗記量が少ない分、試験中に思考力を必要とする問題が多く、試験時間ぎりぎりまで解き続けることもしばしばあります(歴史系の科目であれば、60分の試験時間に対して、30分かからずに解き終えることができます)。思考力を身に着けるのを難しく感じると、地理の点数はあまり伸びない可能性があります。また、少ない暗記すべき事項ですが、どこを暗記してどこを思考力で乗り切るのかの選択を間違えると、意外と暗記量が多くなってしまうということにもなりかねません。

ここから先は、そんな注意点盛りだくさんの地理の攻略法をお伝えしていきます。

【地理の勉強方法①】地理という科目の概説

地理という科目の概説

地理は、系統地理と地誌という2つの大きなくくりから成り立ちます。

系統地理とは、地形、気候、農業、工業、貿易、文化などの各分野を系統立てて学習していく地理のことです。一方、地誌とは、大陸別あるいは地域別に特徴を学習していく地理の事を指します。一般的には、系統地理を学んで、そのあとに地誌を習う形になります。

本屋に置いてあるような参考書を見てみると、系統地理と地誌で分冊されているものが多いです。厚さは同じくらいといったところでしょうか。多くの人は、系統地理と地誌は半分ずつの労力で勉強しなければいけない、と思うかもしれません。しかし、実際は系統地理が圧倒的に重要です。体感として重要性の比率は、系統地理:地誌=3:1くらいです。

なぜ、内容の量と重要さが比例しないのでしょうか。

系統地理の難しさ

系統地理の重要度、難易度はとても高いです。その理由は覚える部分と理解する部分が混在しているからです。地形、気候、文化などは覚えるしかありませんが、農業、工業、貿易といったところは、地形と気候に基づいて理解していくことができます。理解するところを丸暗記してしまうと、最終的には歴史系に匹敵する暗記量になってしまいます。それを避けるためには、地理を学習するうえでの基本姿勢が重要です。

ここから先は、具体的にどのように理解して覚えていくのか、いくつかの例を用いつつ説明していきます。

【地理の勉強方法②】理解と暗記を分ける

理解と暗記を分ける

系統地理には、覚えるべきところと暗記すべきところがあると説明しました。ここからは、各単元、どのように理解したり、覚えたりしていくのかを詳しく説明していきます。

地形はとりあえず丸暗記

どこに山があってどの山は低くてなだらかで、どこが砂漠で、どこが平原で、といったことは、理屈はありません。もしかしたら、学校で最初にプレートテクトニクス、ゴンドワナ大陸といった話を習ったかもしれませんが、これは推測にすぎず、理論的にヒマラヤ山脈が構成されたことを理解することは不可能です。砂漠は回帰線の周辺に集中しているという事実は知っておいてほしいですが、はじめは覚えておいた方が楽です。いきなり難しい理論をたくさんつめこんでも地理が嫌いになるだけなので。

地形を覚えるコツとしては、いきなり具体的な山や大陸、砂漠の名前を憶えていかないことです。地図帳の最初の方のページにある、山が茶色で(高い部分ほど色が濃い)、平野が緑で、砂漠が白で表されている地図です。国境も何も書いてないシンプルな世界地図です。ここをカラーコピーしてよく見るところに貼っておきましょう。とにかく何度も眺めてどこに山、平野、砂漠などがあるのかのイメージを掴みます。

だいたいの場所のイメージを掴んだら、国境のある普通の世界地図を見て、具体的な名前を覚えていきましょう。地理は、国、首都、地名を覚えるクイズ大会ではないので、細かいところまで覚える必要はありません。学校で重要だといわれたところを中心に覚えてください。

気候は最重要だが、細かいところまで覚えなくてよい

ケッペンの気候区分ほど重要な要素はありません。ケッペンの気候区分は、他の単元にも大きく影響を及ぼす基幹単元です。気温と降水量だけで分類するシンプルな分け方ですが、奥が深いです。

まず、A:熱帯、B:砂漠帯、C:温帯、D:冷帯(亜寒帯とも)、E:寒帯の特徴を覚えましょう。熱帯は、暑くてジメジメしているイメージ、砂漠帯は雨が少なく砂漠のイメージ、温帯はある程度温かくて、ある程度雨が降って人が住みやすいイメージ、冷帯は、人がぎりぎり住める寒さのイメージ、寒帯は基本的に人が定住できないくらい寒い南極のイメージですね。

これらのイメージを掴んだ後、熱帯は一番低い月の平均気温が18℃以上といった数字による厳密な定義を知っておいた方が、雨温図から地域を推定する問題に役立つことがありますが、二次試験で地理を使わない人は、選択式で比較して選ぶことができればよいので、厳密な定義までは覚えていなくてよいです。実際、筆者も詳しい定義は覚えていません。乾燥限界値がなんとか・・・と聞くとさっぱりわかりませんが、問題を解くうえで不便を感じたことはありません。Af、Aw、Bw、Bs、Cfa、Cs、Df、Eを知っていれば十分です。なお、ケッペンの気候区分には属していませんが、高山気候(H)もしっておきましょう。地形の世界地図と場所を対応させておきましょう。

次に、気候区分の2文字目に来る内容を覚えていきます。ここは、同じような気温でも、湿っているのか、乾燥しているのかを降水量に基づいて区分していきます。ここでのポイントは、植生をセットで覚えることです。Afであれば、一年中多雨なのでアマゾンのような熱帯雨林をイメージし、Awであれば、雨季と乾季がはっきりしているので、サバンナをイメージし、乾季に耐えられる木がぽつぽつとある疎林や、長草平原をイメージするといった具合です。なお、AmやCfcといったマニアックな区分まで覚える必要はありません。

ここまで来たら、ケッペンの気候区分で塗り分けられた世界地図を見て、各区分のだいたいの位置覚えましょう。これも地図帳の初めの方に見開きであります(地形の次のページに多分あります)。これもカラーコピーして頻繁に視界に入れましょう。

ここまでは、割と暗記暗記といった内容になりましたが、ここから理論を織り交ぜて覚えていく、地理の真骨頂と言った内容に入っていきます。

大気の循環と海流は気候の理解に重要

世間では、ケッペンの気候区分が重視され過ぎて、大気の循環と海流がないがしろにされている気がします。実際、この単元が単体で出題されることはほとんどないのですが、気候を理解する上では非常に重要な単元です。

大気の循環

みなさんは、極風、偏西風、貿易風といわれて、その風が吹く場所、風向を答えられますか?おそらく、多くの人が偏西風は答えられると思いますが、貿易風と極風に関しては、聞いたことすら記憶にない人が多いのではないでしょうか。

以下の図の風の流れは覚えておく必要があります。ただし、循環の名前は覚えなくて大丈夫です。

大気循環 - Wikipedia

引用「大気循環―wikipedia」より

日本は高緯度低圧帯と中緯度高圧帯の間にあるので、南西から北東に吹き抜ける偏西風にさらされているという理解ができます。高圧帯と低圧帯ですが、中学理科の天気の復習になります。天気の内容が完璧でない人は、以下を読んでください。天気の内容が理解できている人は、『』の部分は読み飛ばしてもらって大丈夫です。

『まず、上昇気流と下降気流です。上昇気流は低気圧で雨、下降気流は高気圧で晴れといった丸暗記を理論で説明していきます。空気は、気温が上がると膨張、つまり、圧力は下がります。逆に気温が下がると、空気は収縮、つまり圧力は上がります。晴れているときは、地表の気温が高く、空気が上空に比べて膨張していて圧力が低いため、上空から空気が吹きおろしてくるため、下降気流となります。

また、雨の場合、地表の気温は低く、空気が収縮しており、上空に比べて圧力が高いため、上昇気流となります。風は気圧の高いところから低いところに向かって発生するということは前提知識としています。これが分からない人は、冷凍庫を開けたら冷気が漏れ出してくる様子をイメージしてください。キンキンに冷やされて収縮しまくった空気が室温の空気と交通すると、飛び出していく様子ですね。

あとは、高気圧低気圧のねじれる方向ですが、とりあえず空気はまっすぐ進もうとすると右向きに力を強制的に受けると丸暗記してください。すると、高気圧で吹きおろした風は、時計回りに広がっていきますし、低気圧で上昇していく風は、反時計回りに巻き込みながら上昇していきます。

この右向きの力の原動力は、コリオリの力というのですが、高校レベルでも理解することが難しい概念なので理解は諦めてください。参考までにですが、南半球では、空気はまっすぐ進もうとすると左に曲げられます。この、温かい空気、冷たい空気による風の流れは、季節風の理解にもかなり役立ちます。上記の話を納得したうえで天気分野の学習をしていくと、丸暗記を減らして考えながら解くことができるようになります。』

引用「自分の過去記事―高校受験の理科の勉強法」

天気に関する知識を持っていれば、上図を理解することができ、暗記していなくても自力で再現できるようになります。上図を理解したうえで、改めてケッペンの気候区分で色分けされた世界地図を見てください。

回帰線、つまり中緯度高圧帯の部分に砂漠が多いことが理解できると思います。一年中、下降気流が吹き付けて晴れ続けているので、乾燥し、気候区分はBwとなり、雨が降らないので砂漠が形成されていくというふうに理解することができます。

他にも、赤道付近は、熱帯収束帯なので、一年中上昇気流で雨が降りやすいので、多雨で熱帯雨林気候が発達することが理解できます。

海流

次に海流を見ていきましょう。以下の図のような世界の海流の図を見たことはあると思いますが、上の大気の循環の知識を有した状態だと新たな視点を獲得することができます。

海流図

まず、赤道付近に注目してみましょう。北半球の場合、海流は東から西に流れています。なんと、この海流の向きは、貿易風の風向きと一致します。南半球の場合も同様です。それだけではありません。北半球、南半球の太平洋の中緯度地域の海流は偏西風と一致しています。つまり、海流は大気の循環を知っていれば、ほとんど一致するので新たに覚える必要がありません。(海流の名前は覚えなくてよいです)

とはいっても、海流は暖流か寒流か覚えられないという人が一定数います。しかし、これは常識的な考えで攻略することができます。赤道付近の海水が冷たいか熱いかという質問を受けたら、おそらく小学生でも熱い海水だと答える人が大多数でしょう。赤道は気温が高いので水温も高いと類推することは容易です。よって赤道付近の海水は暖流だと判断することができます。逆に、東北地方や北海道から東に流れる海水は温かいでしょうか。北日本の海は寒いですよね。当然寒流です。赤道付近で温められた水は、陸の近くでカーブし、高緯度地域に向かい、徐々に冷やされます。そして中緯度地域から冷たい海水は横に移動し、また、陸地にぶつかる前にカーブして、低緯度地域に向かい、温められていきます。

このようなおおざっぱな思考で、海流をマスターすることができます。

海流を把握しておくと、イギリスが高緯度な割に不凍港である理由が説明できます。また、海沿いなのにアカタマ砂漠やナミブ砂漠が発生する理由も説明できます。寒流なので、大気が冷やされ、海水が蒸発しにくく、雲ができにくいので雨がほとんど降らないからです。季節によって、中緯度高圧帯が移動することを考慮すれば、大陸の西岸でCsが発達することも理論的に理解することができますが、複雑なうえ、大陸の西岸がCsであるという1つの事実を得られる以上に発展する内容がないので、Csの位置は丸暗記しておくのが良いかなと思います。

このように大気の循環と海流をマスターすると、気候区分を覚える一助になります。ぜひ、大気の循環と海流を理解しておきましょう。

農業はまず各作物の生育条件から覚えよう

農業は、気候と密接なつながりがあります。例えば、お米は、低緯度から中緯度地域の川沿いの平地にて大量に生産されています。これは、お米が温暖な気候で生育することと、水田は大量の水を必要とすることから理解できます。

農業は、文化とも密接なかかわりがあります。例えば、ミシシッピ川流域では、お米を栽培するのに適した環境がありますが、お米は作られていません。なぜなら、アメリカ人は基本的にお米を食べないからです。これは、食文化が影響しているからです。しかし、気候ほどのつながりの強さはないので、あまり重視する必要はありません。農業を理解するために必要な文化の知識は、アジア人はお米を食べる、アメリカ、ヨーロッパの人は小麦を食べる、アフリカはイモを食べるとざっくり覚えておきましょう。

農業と気候に話を戻します。学校や塾では、作物の生育条件から習うことはあまりありません。いきなり、地誌の学習のような方法で、デルタ川流域で稲作、アメリカ北部では春小麦というように各地域でどのような作物が栽培されているかを丸暗記していくことになります。これは、理論を無視した丸暗記に他なりません。小麦は、湿潤している寒い気候でよく育つと覚えておけば、アメリカ北部に限らず、他の地域にも応用を効かせることができます。綿花(多くの水が必要)、トウモロコシ、大豆、畜産(やや乾燥している地域で放牧)などの各農業の生育条件を把握しておくと、丸暗記せずに理解できます。ケッペンの気候区分で色分けされた世界地図と、農業区分で色分けされた世界地図を見比べてみるのもいい勉強になります。もちろん、例外は個別に暗記していくしかありませんが、原則は気候と生育条件は一致するということを知っておくだけで、暗記量を減らすことができます。

貿易は知識を総動員しなければならない

貿易は知識を総動員しなければならない

貿易は、単純な地理の知識だけでは太刀打ちできないことがあります。中学レベルの基本的な世界史の知識が必要になることがあります。例えば、インドやオーストラリアはもともとイギリス領だったことなどが挙げられます。昔は、植民地は宗主国と貿易を行うことが多かった背景があります。一般的に、貿易は大国と近隣諸国と行うことが多いです。日本であれば、近隣の韓国、中国、(北朝鮮は政治的事情により国交を樹立していないので貿易は行っていない)、大国としてアメリカと貿易を行っているといった具合です。EU諸国であれば、EUどうしで貿易を行うことが多いです。

どの国と貿易を行うかに加えて、各国に主要な輸出品と輸入品を覚えて行く必要があります。貿易は、各国を先進国と発展途上国、その間に位置する国々といったように分類するとともに、発展途上国は原料を輸出し、先進国は高度な製品を輸出することが多いという原則を知っておく必要があります。また、鉱業は資源の産地を丸暗記したり、各国の規模をしっておくために人口を大体把握したりしておく必要もあります。貿易に関して包括的な説明をすることはこの場では難しいので割愛しますが、様々な系統地理の分野と若干の世界史知識による各国のパワーバランスを把握する必要がある、とだけ伝えておきます。

ここでは、いちばん重要な1点だけ取り上げます。

統計の読み方

統計とは、人口のランキング、お米の生産量、輸出量、輸入量のランキング、などのことです。統計には、主に2種類に分類することができます。

1つ目は、実数による統計です。例えば、人口ランキングで1位が中国で14億人、2位がインドで12億人、といったように実際の数を用いて表す統計です。

2つ目は、割合による統計です。お米の生産割合は、1位が中国で28%、2位がインドで21%といったように割合で表される統計です。

この2つをきっちり使い分けていないと、どれだけ地理の知識を身に着けても統計の問題を攻略することが出来ません。では、どのようにすれば、実数と割合を区別できるのでしょうか。

ひとつ、簡単な質問をします。

「1人当たりGNIが最大の国はアメリカである。」この文章が嘘だと見抜くことは出来ますか?

ここで、アメリカは世界最大の経済大国でGNIは1位だから1人当たりGNIも1位だろうという推測をしてしまった人は、実数と割合を混同しています。ちなみに、上記の文章は誤りで、1人当たりGNIが最大の国は、ルクセンブルクという小さな国です。1人当たりGNIは、以下の式で産出されます。

1人当たりGNI=(GNI/人口)となります。アメリカはGNIが最大なのは間違いではありませんが、アメリカは3億人を擁する人口大国でもあります。分子であるGNIがいくら大きくても、分母である人口が多い場合、結果として1人当たりGNIはあまり大きな値にはなりません。一方、ルクセンブルクは、GNIはそれほど大きくありません。しかし、人口が極めて少なく、分母が小さければ、1人当たりGNIはとても大きな値になることが想像できると思います。数Ⅲをやっている人であれば、発散をイメージしてもらうとわかりやすいかもしれません。

このように皆さんが普段利用するデータは多くが実数であるため、割合を指標とする統計に出会った場合、混乱することが多いです。

もう1つ、実数と割合を痛感する問題をご紹介します。サウジアラビアとクウェートの2国のうち、輸出額に占める原油の割合が高いのはどちらの国でしょうか。

答えは、クウェートです。多くの人は、サウジアラビアが世界最大の産油国であり輸出国であるからサウジアラビアは輸出額に占める原油の割合も最大だろうという推測をします。しかし、規模の大きい国やある程度発展した国は、輸出品目の多角化が図られているので、特定の品目に頼るモノカルチャー経済にはなりません。よって、サウジアラビアは原油の輸出額は世界一ですが、サウジアラビアの輸出品目における原油の割合は極端に高くはありません。もちろん、1位であることに変わりはありませんが。

輸出品目の割合の統計を見て、国を答える問題は定番ですが、よく似た輸出品目の構成の国が二択で残った経験はありませんか?そういう場合は、割合の横に、総輸出額が記されている場合が多いです。そういった場合は、国の規模と輸出額は比例するので、それで最終的な判断を下すことができます。なぜなら、輸出額は実数だからです。規模の大きい国は、必然的に実数が大きくなります。実際、中国は小麦が主食ではありませんが、小麦の生産量は世界上位で、輸入大国でもあります。

このように、普段から統計を見るときは、実数なのか割合なのかを毎回確認して、割合の場合は注意深く統計を読み取る必要があります。

系統地理のまとめ

系統地理は、気候を中心に深く理解を必要とします。上記のような思考法を持っていれば、丸暗記をかなり減らしたうえ、各事項が有機的につながっており、記憶に定着しやすい状態になっています。都市と村落、文化などにはほとんど触れることはできませんでしたが、気候、歴史的背景に注目して学習を進めれば、丸暗記を減らすことができます。

学校の授業では、具体的にどの地域でお米が作られるといった地誌のような暗記の勉強もありますが、それは、系統地理だけだと理屈ばかりでまったく楽しくない科目になるから、具体例をいくつか挙げてくれているのです。理論を理解したうえで具体例をいくつか知っておくと、地誌の学習がかなり楽になるので、切り捨てずに具体例もどん欲に覚えていきましょう。

【地理の勉強方法③】地誌はまとめ直すだけ

地誌はまとめ直すだけ

地誌は、地域別、大陸別に系統地理で学習したことをまとめ直す作業になります。縦糸が系統地理だとすると、横糸が地誌になります。地理学の分類上、系統地理と地誌は厳密に分けられていますが、学校で習う地理では、系統地理を習っているときに、並行して地誌っぽいことをやっている(農業を習ったときに、具体的な生産地を習っていることが多い)ので、改めて習い直すことは少ないです。

したがって地誌は、系統地理で学んだ各項目を国別で整理していくだけです。例えば、アメリカであれば、地形、気候、農業、工業、都市、貿易とまとめて整理していきます。この段階で、地形や気候が、農業、工業、その他の分野に深く関係していることを再確認することができれば理想的です。新たな知識はそんなに多くはなく、出てきたとしても個別に暗記していくことがほとんどなので、地理の理論的な学習は、系統地理でほとんど完結したといえるでしょう。

まとめ

以上、共通テストに向けた地理の勉強法をお伝えしてきました。社会なのに、理論的な科目という特殊な科目ではありますが、上記のような理屈をしっかり理解したうえで、勉強を進めると、かなり暗記量を減らすことができます。

地理は、高得点で安定することが難しいですが、それは、理論から漏れる、学校でも重視されない内容から出題されることがしばしばあるからです。筆者が受けたセンター試験では、地理でムーミンの出身地を問われるような設問があり、まったくわかりませんでした。このように、細かすぎる知識問題がしばしば出題されるので、そこらへんは諦めて、理論で解ける問題を確実に取って最小限の時間で9割手前くらいを上限として頑張ってください。地理は、しのぎ科目として、地理の勉強で浮いた時間を他の科目で稼いで、ぜひ、合計点を高める努力をしてください。

なお、勉強の事で困ったことがあった際には、是非私たち家庭教師にもご相談ください!

この記事を書いたのは

現役医学部生ライター I

家庭教師ファーストの登録教師。和歌山県立医科大学 医学部に在学中。学生ながら、家庭教師指導人数は20名以上。塾講師経験も。

著作・制作

家庭教師ファースト/株式会社エムズグラント

『質の高いサービスを、良心的な価格で』をモットーに、全国で20年以上家庭教師を紹介しています。実際に担当する教師による体験指導受付中。教育に関する相談もお気軽に。

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